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ドコモspモード版 ワールドベースボール

外国人記者の目 特別版

イスラエル? 無名チームがWBCを盛り上げる

WBCで快進撃を見せているイスラエル代表。(Getty Images)

"Team Israel? Upstarts give WBC intrigue”

 2度の優勝を誇る日本、そして連覇を狙うドミニカ共和国が順当に2次ラウンドに駒を進めた、第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。

 WBCの面白いところは、必ずしも順当に強いところが勝ち上がるわけではない、という意外性か。前回で言えば、オランダが決勝ラウンドまで残った。

 今回は今のところ、予選から勝ち上がった初出場のイスラエルが、アジアで旋風を巻き起こしている。米国に住むユダヤ教徒のマイナーリーガーを中心に構成された彼らは、1次ラウンドで韓国、台湾、オランダを破り3連勝。2次ラウンドでは2戦目のオランダ戦を落としたものの、初戦でキューバを下しており、次の日本戦に勝てば、ロサンゼルスで行われる決勝ラウンドが見える。

 昨年、ダイヤモンドバックスのマイナーでプレーしたイスラエルのザック・ボレンスタインは、「大会が始まる前、みんな僕らが勝つなんて思わなかったんじゃないかな。でも、僕たちはそうは考えなかった」とコメント。そして、「1試合だけ、9イニングだけなら、なんだって起こりうるから」と続けた。

 確かに、やはりマイナーリーガー中心のコロンビアが、メジャーのオールスターで構成された米国とドミニカ共和国を相手に大善戦。あわや、というところまで追い詰めた。一発勝負なら、何があるかわからない。本命の2強も短期決戦の怖さを知ったはずである。

 ボレンスタインらは勝ち抜く以上に、“祖国に野球を広めたい”との思いも持つそうだ。彼らの何人かは昨年、イスラエルを訪れて野球教室などを行ったが、なによりWBCで勝ち抜けばより注目され、“野球をやりたい”と考える子どもたちが増えるかもしれない。目下、イスラエルの首相が率先してツイッターなどでイスラエル代表の奮闘を伝えているのだから、すでに影響された子どももいるのではないか。ただ、ここで終わらせたくない。15日の日本戦に勝てば、本当に4強の可能性がある。大番狂わせが起きれば、祖国はさらに湧き上がるはずだ。

 順当にいけば、日本の方が有利。しかし、ボレンスタインが言うように、1試合勝負なら、何が起こるかわからない。サムライジャパンにとっては、決勝ラウンドに向けた最後の相手が、なかなか厄介な国となった。

【アンソニー・マッキャロン】

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印象的な日本代表選手の中でも菅野は群を抜いていた

リーランド監督から投球を絶賛された菅野。(Getty Images)

"Sugano leads among impressive Japanese stars"

 先日幕を閉じたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。日本は惜しくも準決勝で米国に敗れたわけだが、米国のファンは少なからずそのレベルの高さに驚いたのではないか。

「素晴らしい選手ばかりだった」と話したのは、米国代表の指揮を執ったジム・リーランド監督。

「我々とは少し違った野球をするが、それは良い意味で、ということだ。我々のように長打があるわけではないけれど、進塁打を打ったり、バントで走者を送ったり、また、きっちりカットマンにボールを返すなど、各選手が基本に忠実だった」

 そんな中には、今すぐにでも“メジャーで通用する”という選手がいた。特に菅野智之は、即戦力となりそう。リーランド監督も、「真っ直ぐを外角低めにきっちり制球できる。3ボールからでもスライダーでストライクが取れる。素晴らしい投手だった」と絶賛したが、6回を投げて、3安打、1失点(自責点はゼロ)。オールスタークラスのメジャーリーガーが攻略に苦しみ、6つの三振を奪われている。ゆっくりとしたフォームから、速い球と変化球を自在に投げ分ける姿は、まるでヤンキースの田中将大のようだった。その田中同様、制球も抜群で、仮に菅野がメジャーリーグに移籍するというのなら、争奪戦となるに違いない。

 2番手の千賀滉大もメジャー移籍を考えているなら、年俸は今の数倍にも跳ね上がるのではないか。聞けば今季の推定年俸は6500万円というから、最低でもその10倍になるだろう。彼はあの試合で負け投手になったが、不運なプレーによるもの。それもよりも7回にエリク・ホスマー、アンドルー・マカチェン、バスター・ポージーを3者連続三振に仕留めた場面のインパクトの方が強い。2人とも本当に素晴らしい投手だった。

 野手の中にも、何人か気になる選手がいた。守備の選手と聞いていたが、あの小柄な菊池涼介が反対方向へ本塁打を放ち、非凡なバッティングセンスを見せつけた。米国戦ではヒットがなかったが、東京のラウンドではいずれも3本ずつホームランを放った筒香嘉智、中田翔の存在も米国には脅威となっていた。

「簡単なアウトなんて、一つもなかった」と先発のタナー・ロアーク。「いい打線だった」。

 負けたとはいえ、侍ジャパンは大きな足跡を残していった。

【アンソニー・マッキャロン】

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大谷よ、心配するな WBC不参加でも変わらない価値

WBC不参加を表明した大谷。(Getty Images)

"Rest easy, Shohei: Skipping WBC unlikely to affect value in majors"

 大リーグの各チームの首脳陣がスラッガー兼エースの大谷翔平(日本ハム)をその目で見たいと思っていたのは確かだ。願わくば決勝ラウンドに進出して、ドジャースタジアムで大リーガーを相手に投げて欲しい、とさえ考えていたのではないか。ただ今回、大谷は足首のケガで、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を欠場することになった。これで多くのファンもまた、その目で彼の才能を見ることは出来なくなった。

 だからといってWBCの不参加が、来オフ以降に移籍が濃厚な大谷の市場価値を下げるわけではない。比較対象がベーブ・ルースという二刀流選手は、すでにそれだけ評価が高いのだ。

「個人的にも彼を生で見るのを楽しみにしていた」と話したのは、メッツとオリオールズでGMを務め、現在はMLBネットワークラジオなどで解説をしているジム・デュケット氏。そしてこのように続けた。「だからといって、彼の価値に変更があるとは思えない」

 なぜか? その問いに彼はこう説明している。

「お金のあるチームは彼を早くからスカウトして来た。これからもするだろう。すでにスカウトらは日本で彼のプレーを見ているし、首脳陣はビデオを見て彼のポテンシャルの高さを知っている」

 なるほど、もう評価は終わっているということか。20年以上も大リーグのフロントオフィスで働いていたデュケット氏は否定しなかった。そして笑いながらこう話す。

「もし彼が健康ならWBCに出ないことで何かが変わるわけではない。見られないのは残念だがね」

 ちなみにデュケット氏によると、冒頭でも触れたが、多くのスカウトは彼が大リーガーと対戦することを待ち望んでいたそう。大谷は前回の日米野球でも大リーガーを相手に投げたが、あれはあくまでもエキシビションゲーム。今回、特にドミニカ共和国やベネズエラの選手らは真剣だ。そういう打者と対戦して初めて、大谷の現在地が確認できるというわけだ。

 多くのチームは大谷を投手として獲得したいと考えている。だからこそ、そんな都合のいいシナリオを考えたわけだが、いずれにしてもため息がいろんなところから聞こえてきそうだ。

【アンソニー・マッキャロン】

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選手とファン、アメリカ国内のWBCに対する温度差

WBC参加を表明しているナショナルズのシャーザー。(Getty Images)

U.S. PLAYERS ARE EXCITED FOR WBC OPPORTUNITY, BUT AMERICAN ATTITUDES REMAIN UNCHANGED

 マイク・トラウト(エンゼルス)、ブライス・ハーパー(ナショナルズ)、ザック・ブリトン(オリオールズ)、マーク・メランソン(ジャイアンツ)といった昨季活躍した選手らはすでに、今年3月に行われるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に参加しない意向を明らかにした。その一方で、ナショナルズのマックス・シャーザー、インディアンスのアンドルー・ミラー、ロッキーズのノーラン・アレナドらは出場することを表明している。

 おそらくアメリカの野球ファンは、後者の選手らの決断に対して、より驚きを感じているのではないか。そもそも多くのファンは、日本でWBCのテレビ視聴率がどれほど高いかを知らない。前回大会(2013年)でドミニカ共和国が優勝し、その前の2回は日本が連覇したことも覚えていない。そして残念ながら今回も、彼らの興味は過去3回の大会同様、低いと言わざるを得ない。

 ではなぜ、国を挙げての盛り上がりとなるドミニカ共和国やメキシコ、ベネズエラ、プエルトリコ、そして日本と比べて、アメリカ人のWBC熱が低いのか。いくつか要素があるが、なにより、WBCのタイトルの意味がないに等しい点が挙げられる。ファンや多くの選手、そしてオーナーもそこに価値を感じていない。監督やチームの首脳陣は、参加者が故障することなく帰ってきてくれることを願うのみ。もちろん、出場する選手らは必死だろうが、サポートする側が消極的なのだから、これまでアメリカが上位4球団による決勝ラウンドに進出すらできていないことと無縁ではないかもしれない。

 今回、アメリカ代表の指揮官を務めるジム・リーランド監督もそれを否定していない。

「これまで真剣に考えていなかった、ということだと思う。もっと多くの人が関わるような大会にしなければ」

 ヤンキースなどは、前回大会で主軸だったマーク・テシェイラの参加を認めたが、代表の練習で負傷するとシーズンを棒に振ってしまうこともあり得るから、球団側が積極的になれないのも無理はない。そういう思いは口に出さないまでも、多くのチームにあるようだ。

 リーランド監督は、まずはチームや選手らが、その気にならなければ「勝てない」とし、そうしなければ「ファンもついてこない」と訴えている。目下のところ、日本の大谷翔平(日本ハム)に注目が集まっていることを考えれば、過度の期待はできないだろう。勝ち進めば状況が変化するかもしれないが、今回もアメリカが早々に敗退するなら、WBCという大会そのものが岐路に立たされることになるかもしれない。

【ピート・カルデラ】

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大谷のMLB移籍? 新ルールで二刀流選手は難しい立場に

新労使協定に影響を受ける大谷。(Getty Images)

"Otani to MLB? New rules put two-way star in limbo"

 4年前、ドジャースは大谷翔平(日本ハム)獲得レースで先頭に立っていた。

 その時点で大谷は類まれなる才能を持った“投手”として評判で、野茂英雄、松坂大輔、ダルビッシュ有といった日本を代表するメジャーリーガーに続く選手とも目された。4年後の今、彼はドジャースの評価を上回る選手に成長。投手としては球速が最速103マイルを記録するなど、日本では飛び抜けた存在になった。打者としても今年は打率3割越えをマークし、22本塁打を放つなど完全に才能が開花。二刀流選手として大リーグでもその名が知られるようになった。

 先日、現在所属する日本ハムが来季以降の大リーグ移籍を認め、これで来オフは争奪戦になるかと思いきや、そんな前向きなニュースとは対照的に大リーグではルールが変わった。そして、その変更は移籍の障害になるかもしれない。仮に来年、大谷が大リーグに移籍するとしたら、2億ドル程度の契約総額になるとの報道もあったわけだが、契約金総額はチームにもよるが最大で575万ドルに抑えられる見込みとなったのである。

 問題は年齢。日本のベーブ・ルースは現在22歳だ。これまで23歳未満でプロ経験が5年未満の場合に限って、大リーグに移籍する場合の契約金の総額に上限があった。これは主にキューバ選手に適用されていたものだ。大谷は来年7月に23歳となり、プロ経験も来季で満5年。来オフに移籍するならばそのルールが適用されることはなく、そもそも日米間の移籍協定があるためポスティングを経たあとは自由競争になると見られていた。しかし、先日交わされた大リーグの新労使協定では、年齢の条件が25歳未満に上がり、さらに日本人選手にも例外なくそのルールに従ってもらうと、大リーグ機構は各球団に伝えた。

 この2年の延長こそが大谷を直撃する。来オフに移籍しても契約金は上記の通り。そして結べるのはマイナー契約だ。1年目からメジャーでプレーできるが、その場合の年俸は大リーグの最低年俸。結果を出せば2年目のオフに調停権を得るが、フリーエージェントとなるのは6年後。2億ドルという話は、そのとき初めて現実的となる。また、現時点で日米間のポスティング制度は失効中であり、新しい制度を決めなければ先に進めない。

 先日、日本を訪れたドジャースのエイドリアン・ゴンザレスは、サイン入りのユニホームを大谷にプレゼントし、「アメリカで会うことを楽しみにしている」とメッセージを添えたそう。ドジャースは早くも接触を図り、大谷獲得に前のめりになっていたわけだが、そうした周囲の盛り上がりに対して、大リーグは冷や水を浴びせた。とびきり、冷たい水を。

【ビル・プランケット】

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大リーグのチームは、大谷が打つことに神経質になる?

アメリカでも起用法に注目が集まる大谷。(Getty Images)

"Does Any MLB Team Have the Nerve to Let Otani Hit?"

 日本ハムが先日、大谷翔平の来オフのメジャー挑戦を実質的に認めた、という報道を受け、大リーグでも騒がしくなった。打者としても一流、投手としても一流。二刀流選手は、大リーグにはもう存在しないからだ。

 ただ、大リーグでも二刀流を続けられるかどうか。多くのチームは、打者というより投手として評価しているのだ。その一方、こんなスカウトもいる。

「投手としてはもちろん、打者としても素晴らしい。彼は別格と言っていい。メジャーに来れば、大きなインパクトをもたらすだろう」

 二刀流をやらせてみたい、との思いがのぞく。

 もっとも、打席に立たせるとしたら故障が怖い。おそらく投資額は1億ドル、2億ドルという世界になる。打つことのリスクをどう考えるか。

 例えば、大谷は左打者だ。相手投手の球が利き腕の右肘に当たる可能性もある。右手を直撃する可能性だってある。そうすれば、故障が治るまで打てないだけではなく、投げることもできなくなる。死球によりチームのエースが離脱するのである。GMのレベルでは二刀流を認めて、財布の紐を握るオーナーが積極的になれるかどうか。

 大谷の打ちたいという意向を踏まえ、それを条件として獲得するなら、指名打者が落としどころか。間違っても守らせることはない。外野を守るだけでも故障のリスクは潜む。

 別のスカウトは言った。

「二刀流? いいじゃないか。でも、先発して次の日にライトを守る、なんてことはない」

 そもそも故障の可能性を挙げればきりがなく、普通に投げていても、肩や肘を痛める可能性はある。一塁ベースカバーで走者と交錯し、怪我をするケースもある。野手に専念しても、走塁中や守備のときにケガをすることもある。

 結局、彼を獲得するのだとしたら、チームは彼が本当のベーブ・ルースなのかを見極め、メジャーでは絶滅した二刀流に挑戦させるかどうか覚悟を決める必要があるのかもしれない。実際に大谷を日本で見たスカウトらに聞くと、そういうリスクを冒す価値のある選手だと話す人が少なくなかった。

 果たして、大谷は投手としてマイク・トラウトから三振を奪い、打者としてクレイトン・カーショーから本塁打を打てるのか。それを成し遂げれば、多くの野球ファンに夢を与えるだろう。彼が一種のタブーを破ることで、今後、彼に続く二刀流選手がアメリカからも出るかもしれない。

 あとはチームにガッツがあるかどうか。問われるものは多いが、実に興味深い選手の出現である。

【アンソニー・マッキャロン】

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任天堂は野球がシアトルで成功する基礎を築いた

Nintendo set the standard for baseball success in Seattle

 先週、マリナーズと任天堂の関係は一つの節目を迎えた。マリナーズは、長く最高執行責任者を努めてきたハワード・リンカーン氏の退任を発表。同時に、任天堂が保有する持ち分を10%だけ残し、売却する意向であることが明らかにされた。

 米国任天堂出身のリンカーン氏は、故・山内溥任天堂相談役の命を受け、マリナーズのトップを担って来たが、その座をマイノリティオーナーだったジョン・スタントン氏に譲る。任天堂の持ち分は、彼ら17人のマイノリティオーナーに売却されるとのことだが、実質的にスタントン氏が筆頭オーナーとなるようだ。

 それにしても、1992年に山内氏がマリナーズを買収したときも取材していたが、実に奇妙なオーナーだった。何しろ、彼は球場でマリナーズの試合を見たことがないのだ。大リーグのオーナーで、自分のチームを見たことがないオーナーがいただろうか? また買収したとき、山内氏は、買収に必要な1億ドルの出資額を“ギフト”と呼んだ。つまり、そのままではチームが移転してしまう。それを阻止するために、ポンと1億ドルをプレゼントしたのである。

 ただ、きっかけがどうであれ、任天堂の資本が入ったことで経営的に安定したチームは、1995年、1997年、2000年、2001年とプレーオフに出場すると、客を呼べる球団となった。2001年には大リーグ記録タイとなるシーズン116勝をマークし、エリート球団へと駆け上がっている。

 そういう中で、日本人選手を積極的に獲得。中でもイチローは、大リーグでも野球殿堂入りを確実にしており、日本人選手の評価が変わるきっかけともなった。

 2002年以降、マリナーズはポストシーズン出場から遠ざかり、低迷。イチローも2012年にチームを去るなど、マリナーズは以前とは様変わりしてしまったが、任天堂が筆頭オーナーであった約24年、マリナーズは新球場を建て、赤字が続いたチームを黒字に転換させると、一つのビジネスモデルを作った。このことは、任天堂の最大の貢献といっていい。

 もしあのとき、山内氏が買収に応じてくれなければ、マリナーズは確実に移転していた。シアトルから野球が消えていた。チームを街にとどめ、成功に導いたことは、これからも長く評価されるに違いない。

【ボブ・シャーウィン】

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大谷、キャンプの先発登板で力強い投球を披露

大谷がキャンプ地でスカウト陣をうならせる剛速球を披露した。写真は2015年11月のプレミア12。(Getty Images)

Ohtani looks strong in spring training start

 10日、アリゾナ州にあるピオリア・スポーツコンプレックスの本球場のマウンドに大谷翔平の姿があった。そして、彼を見つめる大リーグのスカウト、メディアらの多くの視線もあった。21歳の大谷はその日、日本ハム同様、ピオリアのスポーツコンプレックスでキャンプを行っている韓国のロッテとのオープン戦に先発し、期待通りの内容で、集まったスカウトらをうならせている。

 2イニングを投げて、1安打、4三振。2回は、三者三振という圧倒ぶりだった。

 アメリカのスカウトによれば、最速は98マイル(約157キロ)。この時期としては、目を疑いたくなるほどの球速だ。スカウトらも自分のスピードガンが信用できないのか、周りにいる他球団のスカウトに確認するほど。その中の一人、パドレスのスカウトはこう評価していた。

「ダルビッシュ有に似ているが、ダルビッシュよりも真っすぐが多い印象だ。間違いなくメジャーで通用する」

 別のスカウトは、「真っすぐがとにかくいい」と話し、「評判通りだ」と微笑んだ。

 大谷は、いつかメジャーリーグでプレーすることを否定していないが、現時点ではまだ具体的な時期が見えて来ない。自分自身、まだ日本での実績が十分ではないと考えているようだが、なにより球団が手放すかどうか。彼は投手としてはすでに一流で、打つ方でも非凡さを見せている。二刀流として、彼は球団にとって“客を呼べる”選手だ。もうしばらくは手元に置いておきたいと考えて当然だろう。

 ただ、メジャーに行くとなったら、田中将大やダルビッシュクラスの話題となるはずで、ポスティング費用も含めた契約総額も彼らに匹敵するはずだ。

 日本の選手に適応されているポスティングシステムは、2016年オフから変更される。現在は、ポスティングフィーの上限が2000万ドル(約22億7000万円)。日本ハムに限らず、日本の球団としては、変更を見据えた上で、選手にポスティングでの移籍を容認するかどうか、判断していくはずだ。

 いずれにしても大谷は、これからどんな道を歩むのか興味深い選手だ。

 また、彼の投球を見て、多くのスカウトがその将来にいっそう興味を抱いたようである。【ホセ・M・ロメロ】

◆ホセ・M・ロメロ

元シアトル・タイムズ紙記者。同紙では大リーグ、NFL、MLSなどを担当し、フェニックスに移ってからは、AP通信を中心にフリーライターとして活躍中。現在はフェニックスに本拠地を置く大リーグ、NBA、NFL、カレッジスポーツなどを主に取材している。

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大谷がアメリカでのキャンプで注目の的に

早くもアメリカで注目を浴びている大谷。(Getty Images)

Spotlight on Ohtani at Fighters camp

 日本ハムの大谷翔平は、アメリカでも知られた存在だ。大リーグでは二刀流選手が絶滅したが、どこか憧れがあり、そんな中で日本人選手がベーブ・ルース以来の2ケタ勝利、2ケタ本塁打を96年ぶりに達成。その偉業は米野球界でも特別なものとして伝えられた。よって、日本ハムが今、アリゾナ州ピオリアでキャンプを行っているが、アメリカ人のファンが大谷のサインをもらおうと現地に集まっていることは、不思議ではない。

 大谷は10日に韓国との親善試合に先発予定。おそらく足を運ぶ米メディアは多いはずだ。大リーグのスカウトは、すでに日本で大谷を見ているが、彼が固いマウンドにどう適応するか、日本のボールといえど、乾燥して滑ることが予想される中でどう対応するか、興味を持って見守るに違いない。もちろんその日、大谷が二刀流を披露してくれれば、ファンにとっては満足な一日となるが、指名打者制度が適応される予定であり、残念ながら今回はその可能性が低い。

 ところで、この日本ハムのアリゾナキャンプは、そうして人が集まることで、ピオリアに大きな経済効果をもたらしている。

 アメリカ人のファンに加え、日本からの旅行者、日本人メディアも集まる。彼らは、近くのホテルに泊まり、レストランで食事もするはずだ。もちろん、選手らも同様。さらに、日本ハムと同じピオリアのスポーツコンプレックスでキャンプを行う韓国チームの選手らと合わせれば、本来なら大リーグのキャンプ前で、静かなピオリアに活気を与えているのだ。

 ピオリアは元々何もない街だったが、税金で球場を作り、それぞれ6面もあるキャンプ施設を2つ作ると、パドレスとマリナーズを誘致。近くにホテル、レストランが立ちはじめ、街が一気に活性化した。シーズン中もリハビリを行う選手らが滞在するため、常に施設が利用されている。

 ただ、シーズンがオフに入ると、例年2月半ばに大リーグのキャンプが始まるまでは静かだが、今回のように韓国や日本のチームが来てくれれば、球場や施設を有効活用できる。それだけではなく、選手だけではなく、ファンらもホテルやレストランでお金を使ってくれるのだから、ビジネス面での効果が大きい。

 ピオリアの本球場はキャンプが終ると、サッカーアメリカ代表の本拠地ともなり、ここで様々な練習も行われるそうだ。となると、ピオリア市は通年、施設を遊ばせておく必要がなくなる。ここまで成功した例は、大リーグのチームがキャンプを行う各施設の中でも珍しいのではないか。対照的にすべての大リーグのチームが撤退してしまったアリゾナ州のツーソンは、空いてしまった施設を利用できないかと、日本の球団にも誘いをかけたらしいが、成功せず、かつての活気を失っている。おそらく、日本ハムが今後もアリゾナでキャンプを行ってくれるなら、ピオリアの一人勝ちはもう少し続く。

 ところで、大谷のサイン目当てのファンだが、中にはそれをオークションサイトで売る目的で近づく人もいる。すでに275ドル(約3万2000円)で売っているところもあった。これは今、アメリカで問題になっているが、大谷は早くも洗礼を受けたことになる。【ホセ・M・ロメロ】

◆ホセ・M・ロメロ

元シアトル・タイムズ紙記者。同紙では大リーグ、NFL、MLSなどを担当し、フェニックスに移ってからは、AP通信を中心にフリーライターとして活躍中。現在はフェニックスに本拠地を置く大リーグ、NBA、NFL、カレッジスポーツなどを主に取材している。

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