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ドコモspモード版 ワールドベースボール

外国人記者の目 田中将大

田中は制限なく開幕に標準を定める

今季の開幕投手に指名された田中。(Getty Images)

WITHOUT RESTRICTIONS, TANAKA POINTS TO OPENING DAY

 今回は早かった。ジョー・ジラルディ監督は田中将大を今季の開幕投手に指名したが、昨季の発表は3月末だった。田中は昨シーズンも開幕投手を務めたものの、そのときはキャンプが終わるまでじっくり田中の状態を見極めてからの判断であった。

 当然といえば、当然。田中は2015年のオフに右ひじの遊離軟骨除去手術を受けた。どの程度回復しているのか、田中自身にも確かめる時間が必要だったのではないか。しかし、今年は違った。昨年は31試合に先発すると、199回2/3イニングに登板。いずれもキャリハイで、オフも順調に過ごした。

 また、田中自身には何かを超えた実感があるよう。

「昨年は8月も9月も、状態が良かったと思う」

 確かな手応えとともに何の不安もなくキャンプイン出来たのは、デビューした2014年以来か。いや、あのときもヤンキースは田中の起用に慎重だった。前年には楽天で212イニングに登板。プレーオフでもフル回転し、その疲労が心配だったのである。悪い予感は的中するもので、7月に田中は右ひじの靭帯を痛めた。幸い、トミー・ジョン手術こそ回避出来たが、翌年のキャンプではスロー調整を余儀なくされた。

 そう考えてみれば、まったく制限のないキャンプというのは今年が初めてかも知れない。キャンプインが早かったとはいえ、すでにこれまでのキャンプと比べれば仕上がりも早く、2月28日にはオープン戦で初登板をした。2月中に登板するのはヤンキース移籍後、初めてである。

 ただ、これだけの状態の良さはヤンキースにとって心配の種にもなり得る。田中は今季終了後、現在の契約を破棄してフリーエージェントになることが出来る。仮に昨年のような成績を残せば、当然の権利としてそれを行使するだろう。となれば、再契約をするにしても額が跳ね上がる。

 田中本人は、「シーズン中に考えることはない」と話しているが、代理人は今からそろばんを弾いているに違いない。

 田中にとって今年が3年連続の開幕投手となるが、ヤンキースではこれが最後になるかもしれない。

【ピート・カルデラ】

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田中の素晴らしいピッチングでこのオフが面白くなった

レッドソックス戦の好投で再び評価を高めたヤンキース田中。(Getty Images)

Tanaka's sharp pitching could lead to winter intrigue

 開幕した当初は安定感がなく、彼の今後のキャリアに影響が出るのでは、というほどだったが、田中将大は先日にボストンで3安打完封という素晴らしいピッチングを披露。再び評価を高めた。

 しかも彼はわずか97球で完封し、最後の14人の打者を完ぺきに打ち取ったが、その間に要した球数はわずか39球だった。1913年以降、ヤンキースの先発投手がフェンウェイパークで完封したのは、2002年にマイク・ムシーナが記録して以来43人目。普段、ヤンキース戦となるといつも以上に騒がしくなるボストンファンも声が出なかった。また、この試合では相手エースのクリス・セールと投げ合ったが、彼を上回る内容だったことも高評価の一因となった。

 試合後、コメントを求められたラリー・ロスチャイルド投手コーチも、この日のピッチングが過去最高だったかと聞かれて、「多くのいい時を見てきたが、1回から9回まで安定していたという意味では、そうかもしれない」と認めている。

 さて、もしもこのピッチングをこれからも続けられるとしたら、彼はこのオフ、大きな決断を下すのではないか。田中は2014年、7年総額1億5500万ドル(約173億3000万円)で契約したが、今オフ終了後に残る3年総額6700万ドル(約74億8000万円)の契約を破棄し、フリーエージェントになる権利を持つ。

 納得の行く投球ができなかった4月上旬、彼が契約を破棄したら、ヤンキースは再契約をしないなどと報じられたが、レッドソックス戦のようなピッチングを見せられるなら、彼がその道を選んでも不思議はない。むしろ、そうすることは当然の権利だ。

 ヤンキースにとってもこのまま田中がいいピッチングを続けてくれれば、悪いことではない。しかし、オフを考えればジレンマもある。契約破棄をされればおそらく引き止めには莫大なお金が必要だろう。

 田中の快投は、本人にも決断を迫り、ヤンキースも今後どうチームを作っていくのかその方向性を見定める中で、田中との交渉を真剣に意識する時が迫っている。

【アンソニー・マッキャロン】

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田中の不安定な2回の先発は、技術面の問題で、契約とは無縁

不安定なピッチングを続けている田中。(Getty Images)

Tanaka's shaky two starts are a product of mechanics, not his opt-out clause

 田中将大は、自分自身に厳しい。彼はキャンプで0・38という防御率をマークしたにも関わらず、制球に納得がいかないようだった。彼はこの春、「あちこち」という表現を度々口にしたが、投げたいところに投げられず、とにかく“あちこち”ボールが行ってしまう、というもどかしさをそんな短い言葉に込めた。

 とはいえ、ここ数年は右ひじに不安があったことからスロー調整を迫られていたものの、今年はそうした懸念とは無縁。それは、田中にとってもヤンキースにとっても大きなことだったのではないか。そうした中で、オープン戦で23回2/3を投げ、9安打、5四球、2失点(自責点は1)、28三振という数字を残したことは、もう大丈夫、という手応えにも繋がったはずである。

 ところが、3年連続の開幕投手となったレイズ戦では、2回2/3で降板。なんと、3回を投げきれなかった。田中は「気負いすぎた」と話したが、ラリー・ロスチャイルド投手コーチもそれを認めている。

「球速が通常よりも速かった。力が入りすぎている証拠だろう」

 それは田中にとって、少し珍しいことでもあったよう。投手コーチも首をひねった。

「彼は、こんなにアドレナリンが出るタイプではないが、抑えきれていなかった」

 今季2戦目となったオリオールズ戦では、5回を投げて6安打、3失点とまとめたが、内容的にはレイズ戦よりも悪かったかもしれない。キャンプで抱えていた制球の問題が明らかとなり、4四球に加え、2つの死球を記録してしまった。彼は昨年、199回2/3を投げて、3つしか死球を与えていないが、それを1試合で2つも記録したのは驚きだった。

 問題は、投球フォームか。少なくとも体には異常がないよう。また、今オフに契約破棄の権利があることとも無関係とみられる。

 先週、ニューヨーク・デイリーニュース紙に、もしも田中が契約破棄を選択した場合、ヤンキースは再契約をしないだろうという内容の記事が掲載された。契約に関することが彼の集中力を欠く原因になっているのでは、ということを暗に匂わせたが、田中自身は「全く関係がない」と一蹴。「キャンプ初日から行っているように、契約内容は理解していますが、マウンドでのパフォーマンスとは無縁です」と強調した。

 ただ、現実的な話をすれば、田中が昨年のような成績(14勝4敗、防御率3・07)を残すなら、残り3年の6700万ドルという契約よりもいい契約が結べるに違いない。そのために力が入っているのでは、という捉え方も出来るわけだが、このまま不振が続けば、そうした雑音がさらに大きくなるかもしれない。

【ピート・カルデラ】

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田中、WBC不参加の決断に2つの側面

WBC不参加を表明した田中。(Getty Images)

THE TWO SIDES OF TANAKA’S WBC DECISION

 ヤンキースの田中将大が、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に参加しないことが決まったが、その決断の裏で安堵と失望という2つの感情が交錯した。

 もちろん、日本のファンはがっかりしただろう。参加は難しいのではと早い段階からささやかれていたが、それでも望みを捨てていなかったはずだ。

 対照的にヤンキースのファン、首脳陣らは安堵したはず。それも理解できる。ヤンキースの感覚では、たかがエキシビションゲームで選手がリスクを犯すことのほうが理解できない。“たかが”というのは、残念ながらアメリカ人のWBCに対する捉え方でもある。この見方を変えるのは容易なことではない。それよりもはるかにシーズンの方が大事なのだ。

 ところで、日本で取材に応じた田中は、「いろんな状況を自分で考えた時になかなか参加するのは難しい」と話したそうだ。

 その“いろんな状況”は、おそらく3つに分けられるのではないか。

 ひとつは、勤続疲労。田中は18歳で楽天に入団後、日本とアメリカで、レギュラーシーズンだけでも1811イニングを投げてきた。これはまだ28歳になったばかりの投手としては相当なイニング数といえる。肩やひじを消耗品と考えれば、オフに無理はできない。

 ふたつ目は、ヤンキースとの契約。田中は、2014年に結んだ総額1億5500万ドルの7年契約の、4年目を迎えようとしている。契約した段階ではメジャーリーグの投手史上5番目に大きな契約だった。その額の大きさを考えたとき、やはりヤンキースとしては田中をケガから守りたい。田中はその意図を汲んだといえる。

 また、それ以上に今オフ、田中は現在の契約を破棄してフリーエージェントになる権利を持つ。開幕前に負傷でもすれば、そこでさらに大きな契約を結ぶこともできなくなってしまう。今年は田中にとってもケガができないのである。

 最後は、故障の歴史か。田中はメジャー1年目に右ひじの靭帯を損傷した。そのときはトミー・ジョン手術を避け、リハビリで復帰を果たしたが、靭帯そのものは自然治癒しない。負担をかければ悪化を招き、今度は手術を避けられまい。田中は右ひじに爆弾を抱えているのも同然で、オフに無理をすることができないと結論を出したとしても、責められる人はいないだろう。

 田中はそうした“いろんな状況”を加味して、現実的な決断を下したといえる。

【ピート・カルデラ】

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田中とダルビッシュはFAとなれば年俸が跳ね上がる

田中は今季終了後にFAとなる可能性も。(Getty Images)

Tanaka, Darvish both due big paydays if they hit free agency"

 日本を代表する二人の投手―田中将大(ヤンキース)とダルビッシュ有(レンジャーズ)のメジャーに来てからのキャリアを振り返ると、ともに故障と無縁ではなかった。ただ、今年1年でその懸念を払拭できれば、来オフのフリーエージェント(FA)市場で莫大な契約を勝ち取るかもしれない。

 田中は今季終了後に、現在の7年総額1億5500万ドルの契約を破棄する権利があり、その場合にはFAとなる。仮に今シーズン、ローテーションを守ってそれなりの成績を残せるなら、迷わず破棄を選択するはずだ。一方のダルビッシュは今季いっぱいで契約が切れる。その前にレンジャーズが断られないような再契約のオファーを出すなら別だが、今のところ彼もまた田中と一緒にFAとなる可能性が高そうだ。

 では、二人はいったいどれだけの契約を勝ち取るのか。予想をするなら、おそらく最低でも5年総額1億5000万ドルを手にするのではないか。いや、もっとかもしれない。このオフはFAの先発投手が少なかったこともあるが、3月に37歳となる、あの故障しがちなリッチ・ヒルがドジャースと3年総額4800万ドルで再契約したことを考えれば、先発投手のFA市場は過熱気味だ。

 おそらく比較すべきは、マックス・シャーザー(ナショナルズ)、デービッド・プライス(レッドソックス)、ザック・グリンキー(ダイヤモンドバックス)らだろう。シャーザーは2014年のシーズンオフにナショナルズと7年総額2億1000万ドルで契約し、プライスは昨オフ、7年総額2億1700万ドルでレッドソックスへ移籍した。グリンキーもほぼ同時期に6年総額2億650万ドルでダイヤモンドバックスと契約している。

 よって、ダルビッシュと田中にとって7年総額2億ドルは一つの目安となりうるが、障害となるとしたら、ともに右肘か。田中はデビューした2014年7月に右肘の靭帯を痛めた。遅かれ早かれトミー・ジョン手術が必要になる、との見方は消えない。ダルビッシュは、そのトミー・ジョン手術から昨年5月に復帰したばかり。今年は完全復活したかどうか、その証明が求められる。

 二人とも少しでも右肘に異変があれば大幅に価値を下げうるが、1年を無事に過ごせば、彼らの契約額は総額2億ドルの大台を超えるかもしれない。

【アンソニー・マッキャロン】

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WBC参加は田中の決断、だがリスクもある

WBC参加か否か田中の決断に注目が集まる。(Getty Images)

IT IS TANAKA'S CHOICE TO PITCH IN THE WBC, BUT THERE ARE RISKS

 来年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、ヤンキースの田中将大は日本代表のユニフォームを着て投げているのか。あるいは、フロリダでヤンキースのユニフォームを着て投げているのか、今の段階では誰も分からない。ただ、田中が本当に日本代表としてWBCに参加したいと考えているのなら、それをヤンキースが止めることはできない。

「我々が、決断するわけではない」とヤンキースのブライアン・キャッシュマンGM。

 言い換えればそれは、田中の決断だ、ということになる。

 田中の腕は問題なさそうだ。そして、母国のために投げることは彼の権利。また、“投げてくれ”というプレッシャーもあるだろう。

 もし仮に、WBCが今年の春に行われていたとしたら、田中は確実に参加を見送ったのではないか。彼は昨年秋に右ひじの遊離軟骨の除去手術を受けたが、その時点で日本代表チームも招集を諦めたはずである。ところが、来年の春に関しては状況が異なる。

 田中は今季、ヤンキースに入団してから初めて、故障者リストに入ることなく1年を過ごし、31回に先発。14勝を挙げ、投球回数は199回2/3イニングに達した。これは楽天時代の2013年以来、最多である。これで田中が来年のWBCに投げる決断を下しても、ヤンキースの首脳陣は認めざるを得なくなった。

 ただ、体に問題がなく、結果を残したからといって、決断が容易になるわけではない。ヤンキースが心配しているとしたら、それは十分に理解できる。特にここ2年のキャンプでは、いずれも前年の故障、あるいは手術の影響で、スロー調整を余儀なくされた。田中がWBCに参加するとしたら、かなり早い段階から調整を始めなければならず、過去2年とは大幅に日程が変わる。その影響をヤンキースが懸念するのは当然のことだ。

 そういう状況下でヤンキースが田中に言えるとしたら、「それはベストな選択ではない」ということだけだが、おそらくその会話は必要ないのではないか。田中は、自分の体を誰よりもよく知っているし、リスクも理解しているはずだ。

 田中は来オフ、それ以上に難しい決断を下さなければならない。彼は、現在の契約を破棄して、フリーエージェントになることができる。もし、来季も今季同様の成績を残せば、その権利を行使することは確実で、さらなる大型契約を狙いに行くだろう。来季が終わればヤンキースとの契約は残り3年で、総額は6700万ドルだが、今の田中ならその同じ3年間で総額8~9000万ドル程度の契約を勝ち取れるはずだ。

 交渉を有利に進める上でも、田中にとって来季は重要な1年となる。そこまで考えたとき、彼は果たして本当にWBCに出るという決断を下すだろうか?

【ピート・カルデラ】

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ヤンキースはPOへ進めなかったが田中は役割を果たした

シーズンを通して役割を全うした田中。(Getty Images)

Yankees season ends short of playoffs but Tanaka finishes the job in 2016

 田中将大はゴールにしっかりたどり着いた。ヤンキースがプレーオフを逃したのは、ここ4年で3度目。しかし、田中は移籍3年目で初めて故障者リストに入ることなく1年を過ごした。

 田中もある程度は、納得できたよう。

「ここまで故障なく来ることが出来たのは、大きな意味がある」

 成績は、31試合に先発し14勝4敗、防御率3・07。199回2/3を投げて36四球。

 もし、最後にもう一度先発していれば、投球回数が200回に達し、防御率のタイトルを獲得するチャンスもあったが、プレーオフ出場の可能性がなくなったため、ジョー・ジラルディ監督は田中に無理をさせなかった。田中自身は、「投げたかった」と話すも、その少し前に右前腕部に張りを感じており、監督の決断も当然だった。

 田中も、「理解できますし、予想はしていた」とそれを受け入れている。

 “シーズン完走”同様、田中が今季克服したのは、中4日の先発。今季前半は、中5日以上登板間隔が空いた方が中4日よりも結果がよく、そのことが度々指摘されたが、後半は中4日でも結果を出しており、ジラルディ監督も、「大きな成長といえるのではないか」とさらに期待をよせる。

「これで毎年、200イニングを投げられる投手として、計算できそうだ」

 ちなみに、先ほど触れた右前腕部の張りの件だが、田中は、「全く問題ない」と話し不安を一蹴した。

 いずれにしても、シーズン通して投げたこと、中4日の懸念が消えたことは大きなステップ。これで本当の意味でチームが信頼できる投手となった。シーズン終盤、チームがプレーオフ出場を争うことが出来たのも、彼によるところが大きかったとファンの記憶に刷り込まれている。

 一つだけ思うことがある。9月15日のレッドソックス戦で、田中は7回まで4安打、1失点と好投していたが、チームは9回に大逆転負けを喫した。勝っていれば、地区首位のレッドソックスまで3ゲーム差になるところだった。その試合を含めてチームは5連敗を喫し、プレ-オフの望みが遠のいたが、仮にあの日、ジラルディ監督が田中を続投させていたら、シーズンの行方はどうなっていたのか。

 今季の分岐点だったといえるかもしれない。

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サイ・タナカ? ヤンキースのエースは受賞のチャンスあり

サイ・ヤング賞候補に急浮上した田中。(Getty Images)

"Cy Tanaka? Yankee Ace Has a Chance at the Award"

 これまで、ヤンキースの田中将大に投手の最高の栄誉であるサイ・ヤング賞のチャンスがあるとは考えられていなかった。しかしここにきて、その候補に急浮上し、仮に受賞すれば、日本人投手では初となる。

 14日の時点で田中は、29試合に先発し13勝4敗、防御率3・04である。防御率はリーグ2位、投球イニングは186回2/3でリーグ7位。特に後半戦に入ってから調子を上げ、ここ6試合は防御率2・01と安定。過去7試合では、4四球しか与えていない。

「彼の名前を消すのは難しいだろうな」とヤンキースのチームメイト、アダム・ウォーレン。地元紙の取材にこう続けた。

「彼がいかに安定した投手であるか。いかに低めにボールを集め、長打を許さないか。ときにこの1カ月ほど、彼は素晴らしいピッチングを続けている」

 もちろん、ライバルは少なくない。

 現在、筆頭候補と見られているのが、レッドソックスのリック・ポーセロで、すでに20勝(4敗)をマークしている。2014年にサイ・ヤング賞を獲得したコリー・クルバー(インディアンス)も16勝9敗、防御率3・05、208三振で圏内にいる。他にも、18勝をマークしているJ.A.ハップ(ブルージェイズ)や、クリス・セール(ホワイトソックス)、デービッド・プライス(レッドソックス)、ジャスティン・バーランダー(タイガース)といったビッグネームも票を集めるだろう。先発陣の他にも、オリオールズのザック・ブリトンが43セーブをマークし、さらに防御率0・61と圧倒的だ。彼も十分候補である。

 田中には、かくも多くのライバルがいるわけだが、投票する我々にとって、個人成績の他にチームへの貢献度も大切な要素。その意味で田中は、その条件を十分に満たしている。

 ヤンキースは7月にチーム再建に舵を切り、アレックス・ロドリゲス、カルロス・ベルトラン、アロルディス・チャプマン、アンドルー・ミラーらがチームを去った。代わって昇格してきた若い選手らが活躍し、図らずもプレーオフ出場を争っているわけだが、そこで若い選手以上に貢献しているのが、やはり田中なのである。

 さて、残りの登板で田中はどれだけの結果を残せるか、そしてチームをプレーオフに導けるかどうか。シーズンもいよいよ、残り約2週間である。

【アンソニー・マッキャロン】

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降雨中断にヤンキースは大事をとって田中を降板させた

71球を投げたところで降板となった田中。(Getty Images)

Out of caution, Yankees end Tanaka's start due to rain delay

 ヤンキースの田中将大は今季、チームの中でもっとも信頼できる先発投手だ。故障で離脱する投手が相次いだことを考えれば、健康面でももっとも不安のない先発投手である。しかし、その田中が右ひじに爆弾を抱えていることは、ヤンキースのジョー・ジラルディ監督の頭の中に常にある。

 30日に行われたヤンキース対ロイヤルズ戦は5回が終わった段階で雨脚が強くなり、59分間の中断を余儀なくされた。するとジラルディ監督は、まだ71球しか投げていなかった田中を交代させた。

 59分間というのは微妙な時間だ。通常、こうした降雨中断のケースで先発投手を続投させるか、降板させるかの目安は、1時間程度とされる。まさにその時間だったわけで、監督にとっては難しい判断になるが、今回に関してはさほど難しい決断ではなかったよう。中断から20分ほどたった時点で、ヤンキースのラリー・ロスチャイルド投手コーチは田中のところに歩み寄り、降板を告げた。

 田中は、「まだ、70球ぐらいしか投げていない。十分にいけた。出来れば、マウンドにいきたかった」と悔しさを滲ませたが、ジラルディ監督は割り切っていた。

「彼だけに限らない。こういうケースでリスクを犯そうとは思わない。投手を守るのは我々の役目だ」

 同じ試合では、8、9回と2イニングを投げたクローザーのデリン・ベタンセスを、リードして迎えた10回裏から代えた。その時点でまだ22球。無理が出来る球数ではあったものの、そこでもジラルディ監督はリスクを犯さなかった。

 もちろん、チームが置かれている状況にも関係している。ヤンキースはまだプレーオフ進出の可能性を残しているが、容易ではない。そもそも、主力を7月にトレードで放出し、来季以降に舵を切った。そのようなチーム方針の中、ここでリスクを犯す価値はない。仮に、地区優勝を争っているなら、その限りではないはずだが。

 いや、それでも田中の場合は例外か。2014年7月に右ひじの靭帯を損傷してから、ジラルディ監督は同投手に無理をさせられないと考え、これまで登板間隔を開けるなど配慮してきた。

 田中に悔しさがあるとしたら、そうした気遣いなのかもしれない。

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田中はヤンキースの若返りに適任

若返ったローテーションで中心を担う田中。(Getty Images)

"Tanaka fits into Yankees youth movement"

 ヤンキースは今、世代交代を加速させている。同時にプレーオフのワイルドカード争いにかろうじて加わっている。どこまで食らいついていけるかだが、アーロン・ジャッジ、ゲーリー・サンチェスといった若手が頭角を現し、ファンを楽しませている。

 そうした中で27歳の田中将大は年長の部類にはいるが、若手の筆頭といったところか。先発陣の世代交代も進んでおり、今後は否が応でも、柱として期待される。ヤンキースはこれまで、数年かけて田中中心のローテーションへとシフトしてきた。

 ブライアン・キャッシュマンGMも「先発ローテーションの若返りを図ってきた」と明言する。

「田中を獲得するために、大金を払った。マイケル・ピネダ(27歳)とネーサン・イオバルディ(26歳)をトレードで獲得した」

 田中は、19日に敵地で行われるエンゼルス戦で今季25度目の先発をすることになっているが、ここまでの成績は9勝4敗、防御率3・40。この試合で勝ち投手となれば、2015年7月以来の3連勝で、それなりの結果を残してきたことになる。

 そのエンゼルス戦を前に、ヤンキースはワイルドカードレースで進出圏内から5・5ゲーム差をつけられている。出来れば、田中の他、先ほど触れた若いジャッジやサンチェスの活躍で、争いに参戦し続けたいところ。それが若いチームにとっては自信に繋がる。

 いや、すでに自信を持ち始めているのかもしれない。ジョー・ジラルディ監督が言う。「若い連中がここまで活躍しているから、この位置にいる」

 キャッシュマンGMにも手応えがある。

「我々は、チームを変える過程にある。先発に関してはさっきも触れたように、田中、ピネダ、イオバルディの若い選手らが軸となる。打線は、出来れば、サンチェス、ジャッジ、タイラー・オースティンらがさらに成長して、核となって欲しい」

 そうした新しい方向性を目指す中で、言うまでもなく、田中は絶対的なエースとしての役割を期待される。それに田中が応えられるかどうか。残り1カ月半でそれを示すことが出来るなら、ヤンキースファンも来季に対し、希望を持ってオフを迎えられるはずだ。

※数字は17日終了時点

【アンソニー・マッキャロン】

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ヤンキースが来季へ前進する中、田中は連敗を喫した

今月2日のメッツ戦で2連敗を喫した田中。(Getty Images)

WITH YANKEES MOVING TOWARD 2017, TANAKA LOSES SECOND STRAIGHT START

 8月2日のメッツ戦、田中将大がシティフィールドで先発したが、彼はこれまでとは違うチームにいるような錯覚に陥ったのではないか。

 前回の登板──7月27日の時点でヤンキースは、直前の10試合で8勝を挙げ、プレーオフ争いに復帰した。

 ところが、その27日のアストロズ戦で田中が負け投手となったあと、ヤンキースはそこから4連敗。その次の田中の先発が今月2日だったわけだが、その間にヤンキースは、アンドルー・ミラー、イバン・ノバ、カルロス・ベルトランらをトレードしてしまった。もう少し遡れば、クローザーのアロルディス・チャプマンも放出している。わずかな間に、チームメイトの顔ぶれががらりと変わった。

 ヤンキースのフロント陣はもちろん、2016年シーズンを諦めたとは言わないが、そうした主力のトレードは、来季を見据えて動いているという明確なメッセージだ。

 実は、これはヤンキースでは珍しいこと。1989年以来、彼らはトレード期限で、スーパースタータイプの選手をトレードしたことはなかった。それはつまり、ヤンキースは常に“買う”側であり、同時にチーム状態が長きにわたって好調だったことを示しているが、今年は大胆に再建へ舵を切った。

 田中も、驚きをもってトレードのニュースに接したよう。

「こういうのは初めての経験ですから。過去2年、何人かとは個人的な関係も築いてきた。その意味では、がっかりした面もある」

 ただ、さすがに3年目。メジャーリーグの事情も理解している。

「これが、メジャーリーグのビジネスなんだろうと。寂しいですが、受け入れるしかない」

 さて、このコメントは2日の試合後のことだが、田中は2試合続けて不甲斐ないピッチングを見せてしまった。

 6回1/3を投げて、8安打、7失点。7失点以上は今季2度目で、メジャー通算では4度目だ。

 その7回途中で降板した時、田中はジョー・ジラルディ監督が来る前に、マウンドを降りた。これはメジャーリーグでは、監督に対する侮辱的な行為とされる。マウンド上でボールを手渡すのが流儀だ。

 ただ、この時ダブルスイッチが行われており、ジラルディ監督は「田中は混乱したようだ」と擁護した。田中も、「(降板のタイミングが)よくわからなかった」と話しており、初体験のダブルスイッチに確かに戸惑っていたよう。

「2人の間には何もない」と、ジラルディ監督。田中も「特別な感情はない」と話し、わだかまりはないとしたが、見ていてヒヤリとする場面ではあった。

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田中、正念場でヤンキースの期待に応えられず

正念場で勝てず手痛い一敗を喫した田中。(Getty Images)

When the Yankees need Tanaka the most, the Yankees' ace let them down.

 守護神のアロルディス・チャプマンをトレードで放出したが、ヤンキースはまだプレーオフ進出を諦めたわけではない。ワイルドカードなら、という狙いはある。27日、そのひとつも負けられない状況で田中将大にマウンドを託した。

 ヤンキースはその時点で3連勝中。エースで勢いを加速させたかったが、田中は2回に先制を許すと、3回にも3点を失い、チームは序盤で4点のビハインドとなった。

 試合後、「自分自身にがっかりしている」と反省を口にした田中。やはり背負うものが大きかっただけに、その期待に応えられなかった思いが、短い言葉に滲む。

 仮にこの試合に勝っていれば、この日ワイルドカード2位のレッドソックスがタイガースに敗れたため、プレーオフ進出圏内まで3・0ゲーム差に迫るところだったが、その差が縮まることはなかった。

 田中は、決め球であるスプリットが良くなかった。3回には、コルビー・ラスマスに本塁打を許している。ラスマスは、目下29打数ノーヒットのスランプだったが、84マイルの高めに浮いたスプリットを右中間に運んだ。田中も納得のいくスプリットが投げられなかったことを認めている。

「(スプリットが)落ちなかった」

 ただ、ジョー・ジラルディ監督は「スプリットだけが悪かったわけではない」という。確かに、スライダーも決して効果的ではなかった。だが、それ以前に制球が良くなかった。

 2回、下位打線の打者を連続で歩かせたが、そこから先制を許している。彼の与四球率は1・8。連続で四球を与えることなどまずないのに、彼らしくなかった。

 田中自身も、制球難に関しては認めたが、それよりもいい流れを止めてしまったことを悔いた。

「せっかくここまでいい流れできて、今日は絶対に勝ちたいと考えてマウンドに上がったけれど、そういうピッチングが出来なかった。そのことにがっかりしている」

 この日、ヤンキースは田中の好投を必要としていた。プレーオフを考えればなおさらである。しかし、彼はチームに勝ちをつけることが出来なかった。いろいろな意味で手痛い1敗となった。

【アンソニー・マッキャロン】

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ヤンキースは正念場で田中を“3番手”として起用する

今季前半戦で6勝を挙げた田中。(Getty Images)

TANAKA PITCHES THIRD IN THE SECOND HALF AT CRITICAL TIME FOR THE YANKEES

 ヤンキースの後半戦が15日から始まるが、その初戦のマウンドに田中将大の姿はない。ヤンキースは後半初戦をマイケル・ピネダ(3勝8敗、防御率5・38)に託し、2戦目はCC・サバシア(5勝6敗、防御率3・77)、田中が先発するのはようやく3戦目のレッドソックス戦だ。

 ヤンキースとしては前回の内容が懸念材料となったか。田中は、10日の前半最終戦に登板したが、10点のリードをもらいながら、5回を投げきれなかった。ジョー・ジラルディ監督はその原因を疲労と考え、中6日に登板間隔をあけたのかもしれない。実際、田中はヤンキースではただ一人、前半の投球回数が100イニング(117回)を超えた。また、ヤンキースの先発陣ではもっとも多い18試合に先発し、勝率5割がやっとのチームで6勝2敗、防御率3・23と奮闘している。

 昨季を見ると、田中が18回目の先発をしたのは8月21日のこと。4月終わりから6月上旬にかけて、右前腕の軽い張りで1カ月以上も戦列を離れたからだが、実はメジャーリーグに移籍してからフルシーズンを投げたことがないだけに、ヤンキースはここで無理をさせる必要がないと考えたかもしれない。

 ただ、このチームの判断には少々、疑問も残る。田中が17日に登板するということは、次のシリーズとなるア・リーグ東地区首位のオリオールズとの4連戦に、田中は投げられない。

 ここでオリオールズに離されるようなことがあれば、チームとしては地区優勝が絶望的になる。ブライアン・キャッシュマンGMもそのことは認めているものの、田中を先発させないことを決めた。

 今季の田中は中4日で投げた場合、1勝2敗、防御率5・33と結果を残せていない。中5日の場合は、4勝0敗、防御率1・05だ。そうしたデータも参考にしたようだが、オリオールズとのシリーズに田中をぶつけないとは、なんとも思い切ったことをする。

 これはギャンブルだろう。吉と出るか、凶と出るか。それはシーズンの行方を占う賭けともいえそうだ。

【ピート・カルデラ】

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田中は不安定なローテーションを少し安定させている

ヤンキースの柱として期待のかかる田中。(Getty Images)

Tanaka offers uneven Yankee rotation some stability

 ヤンキースの田中将大は6月29日、レンジャーズ打線に打ち込まれた。6回を投げて8安打、6失点だったが、それでもヤンキースの先発陣の中ではここまで抜群の安定感を誇る。田中は7月5日に敵地で行われたホワイトソックス戦に先発したが、ここまで6勝2敗、防御率3・12で、田中が先発した試合ではヤンキースが12勝5敗と大きく勝ち越している。

「先発投手にとって大切なのは、我々に勝つチャンスを与えることだ。田中は、そういうピッチングをしてくれている」とヤンキースのジョー・ジラルディ監督。さらに続けた。

「彼は必要なときにアウトを取る能力がある。彼のスプリットは三振が必要なときに大きな武器となる。我々が求めるのは、勝つチャンスをくれということだが、彼はその仕事をしてくれている」

 確かにそれは、田中がチームから信頼を得ている大きな要素だ。若いルイス・セベリノは将来の有望選手として期待されたが、残念ながら後退した。マイケル・ピネダ、イバン・ノバはともに不安定なピッチングを重ね、フラストレーションの溜まるシーズンとなっている。CC・サバシアはいい時もあり、球速も戻って来たが、ここ2試合は13回を投げて16安打、11失点と散々である。

 そしてついに4日、ヤンキースは不振のネーサン・エオバルディを先発からブルペンに回した。次の先発はエオバルディに代わってマイナーの投手が彼の穴を埋める予定になっている。彼はオールスター後にローテーションに復帰する予定だが、それぐらいチームを失望させた。

 対照的に田中は先発した17試合のうち、6イニング以上投げたのが14試合もある。6回以上を投げて、その時点で勝っていれば、ヤンキースには7~9回に鉄壁のブルペン陣(デリン・ベタンセス、アンドルー・ミラー、アロルディス・チャプマン)がいるので、極めて勝つ確率が高くなる。また田中は、17試合中11試合は2失点以下に抑えており、その点でもチームに勝ちをもたらすピッチングをしていることが分かる。

 後半、ヤンキースが巻き返すとしたら、不甲斐ない先発陣の復調がカギだが、田中はこのまま柱として投げ続けることを期待される。その肩には重い負担がのしかかっているが、それが今のヤンキースというチームの現状でもある──残念ながら。

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田中は登板間隔が開いた方が結果を残せる?

24日(日本時間25日)に登板予定の田中。(Getty Images)

Tanaka better on extra rest this season, but it’s not always the case

 ヤンキースの田中将大は、24日(日本時間25日)に登板予定だが、今回は中6日での登板となる。

 これは通常よりも2日間休みが長いが、メジャーリーグにはそうして登板間隔が開くことを嫌う投手の方がむしろ多い。そういった投手からは、肩が軽くなりすぎて制球を乱す、あるいはリズムを崩すといった不満をよく耳にする。先発投手には独特のルーティーンがある。そこに一旦乱れが生じると、元に戻すものも大変だということだそうだ。

 しかし、田中の場合はメジャーリーグ移籍以来、中4日よりも中5日で投げた方が結果が出ている──と捉える人が多い。

 実際はどうなのか。

 例えば昨年、田中は中5日で14回先発した。一方で、中4日は5回だ。結果はと言えば、前者の場合は7勝4敗、防御率3・51、被打率2割3分6厘となっている。後者は2勝2敗、防御率2・56、被打率1割8分8厘。勝率は5割だが、内容そのものは中4日で投げた方がいい。

 では、今年はどうか。

 田中は6月17日の時点で、中4日、中5日でそれぞれ6回ずつ投げている。結果は、中4日の場合が、1勝2敗、防御率4・70、7四球、26三振で、計38回1/3を投げて6本のホームランを許した。一方、中5日の場合は、3勝0敗、防御率1・24、4四球、32三振で、計43回2/3を投げて披本塁打はわずかに1本だ。つまり、今季に限っていえば、中5日で投げた方が圧倒的に結果を残している。被打率も中4日が2割7分なのに対し、中5日は1割8分9厘。ここでも差が出ている。

 ヤンキースは先日まで、41日間で40試合という厳しいスケジュールだった。その間、田中には中4日で登板させたが、こうした傾向が出ている以上、チームもデータの分析をしているはずだ。

 もちろん、エースならば中4日できっちり仕事を果たすべきだ、という捉え方もあるだろう。しかし、田中の場合、2014年に痛めた右ひじの靭帯のこともある。1日でも登板間隔が開けば、その分回復する時間を与えられる。無理させるよりも、シーズン通して結果を残すことが大切。再び連戦が続けば仕方がないが、田中に関しては今後、登板間隔に配慮しながらの起用が続くかもしれない。

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田中は前回登板で魂を込めた

6日のエンゼルス戦で先発登板した田中。(Getty Images)

"Tanaka's all heart in latest performance"

「今日はすべてがダメ。でも、なんとか粘って最低限のダメージで終えられた」

 6日のエンゼルス戦後、ヤンキースの田中将大はその日の登板をそう振り返った。確かに、彼の決め球ともいえるスライダー、スプリットは制球が定まらず、厳しい内容。しかしながら、7回を投げきって、6安打、2失点。彼が言うように、ダメージを最小限にとどめ、味方の逆転勝ちを呼び込んだ。

 では、“すべてがダメ”だったのを、田中はどう補ったのか。そのことについて田中は、「気持ちで投げた」と説明している。マウンドでは、手のひらを上下に動かして、低めに、低めに、と言い聞かせるように投げていた。その気持ちが勝ったのだろう。エンゼルス打線の核で、過去4年間、MVPの投票で1位が1回、2位が3回というマイク・トラウトを無安打に仕留めるなどしてビッグイニングを与えなかった。

 これで田中の防御率は2・76となったが、ヤンキースの先発陣の中では安定している。田中は12試合に先発して、自責点が3を超えたのはわずかに2回だけだ。勝敗は3勝1敗だが、もっと勝ち星がついていてもおかしくない。

 ただ、田中はいう。

「それは野球の一部ですから。自分ではコントロールできません。僕が出来ることと言えば、相手を0点に抑えることだけです」

 だが、田中は、これまで8試合も勝敗がつかなかったことは記憶にないとでも言いたげだった。

「多分、初めてだと思います。何回? 8試合?」

 とはいえ、田中が先発した12試合でヤンキースは8勝を挙げている。先発投手の仕事は、勝っていても負けていても、チームが勝つチャンスを残してマウンドを降りられるかどうか。その意味で田中は、十分な仕事をしている。そしてエンゼルス戦では、状態が悪いときでもそれなりのピッチングが出来ることを証明した。ジョー・ジラルディ監督も満足げだった。

「彼は、自分で自分のけつを叩いたかな。スプリットもスライダーもよくなかったが、そういう中でも、相手を打ち取る方法を考えてくれた」

 調子の悪いときでも試合が作れる。そういう投手こそ監督は信頼するが、ジラルディ監督は今、田中に試合を託せる心境にいたっている。

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田中は直球を武器に散々だった2度の登板から立ち直った

直球を改善し、見事な立ち直りを見せた田中。(Getty Images)

TANAKA, USING IMPROVED FASTBALL, BOUNCES BACK AFTER TWO ROUGH OUTINGS

 ヤンキースの田中将大は、5月10日と15日の登板で散々だった。ロイヤルズとホワイトソックスに対し、計12イニングを投げて10点を奪われた。しかも4本塁打を許している。

 その中で迎えた21日のアスレチックス戦。ここでも期待に応えられなければ、本格的に懸念の声が挙がっていたはずだが、田中は結果を出した。7回を投げて、5安打、1失点。過去2回の先発では真っすぐも、決め球であるスプリットも効果的ではなかったが、この日の投球ではすべての球種が田中本来のものだった。

 ただ、田中自身は「前回と球そのものは特に変わっていません」と話す。「今日はオフェンスに助けられたから、勝てたのだと思います」。しかし、「ツーシームは良かった」と改めて振り返り、具体的に説明した。「ツーシームの制球が良かった。それがカギになりました」。

 田中はこれで今季2勝目(0敗)だ。ヤンキースも今季最多の4連勝となった。そして約1カ月ぶりに地区最下位から抜け出している。このところヤンキースの先発陣は好調で、イバン・ノバ、ネーサン・エオバルディ、CC・サバシアの3人で合計18イニングを投げ、3失点だった。田中はそのいい流れに乗った。

 田中自身、そのことを意識したようだ。

「先発陣がみんな良くなっていますから、同じように投げたかった」

 田中は、先発投手が踏ん張れば流れが変わるという話もしたが、その通りで、ヤンキースには、デリン・ベタンセス、アンドルー・ミラー、アロルディス・チャプマンという強力なブルペン陣がいるため、そうした勝ちパターンが使えるようになる。彼らだけに頼ることも出来ないが、今回、田中が7回まで投げたことで、彼らを2日連続で休ませることが出来た。田中の好投はその意味でも大きかった。

 ちなみにここ2試合は、中4日での登板だったが、今回は中5日だった。それが助けになったのかと聞かれた田中だったが、「僕は、いつでも中4日でいける準備をしている。それは問題ではありません」と否定した。実際、中4日で投げさせることを心配しているのは首脳陣の方だが、田中が中4日でも結果を示せれば、すべての懸念が払拭されそうだ。

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打たれても田中はエースだ…一発病が深刻にならない限り

試練のときを迎えている田中。(Getty Images)

"Despite poor outing, Tanaka's still Yanks' ace, unless homers become an issue"

 ヤンキースは、7回を投げて7安打、6失点、3本塁打という10日の田中将大の登板を深刻に受け止めるべきなのだろうか?

 おそらくファンの答えはイエスだが、チームはそこまで重く捉えていまい。どんな投手でも、例えオールスター級の投手でも、年に数回は打ち込まれることがある。

 そもそもそれまで、田中は徐々に安定感を見せていた。開幕6試合の防御率は2・29。勝ち星こそ一つしかないが、それまでも自責点が2を超えたことはなかった──開幕6試合目まで、無失点登板はなかったが。

 ただ、10日の試合で3本塁打を許した点は気になる。1試合3本塁打はキャリアワーストタイだが、今年はそれまでシーズン通して2本しか本塁打を打たれていなかったのだ。

 振り返れば昨年、田中は披本塁打の多さが度々指摘された。昨季は154イニングで披本塁打は25本、9イニングあたり1・5本の割合だったのだ。そしてアストロズとのワイルドカードゲームでも許した2本の本塁打が、結果的にヤンキースのシーズンを終わりに導いた。その傾向が今年は影を潜め、それが田中の安定感に繋がっていたわけだが、今は披本塁打の話題が再燃しそうな勢いだ。

 捕手のブライアン・マキャンは、「わずかなミスだ」と話す。となれば今後、田中がそのわずかなミスを減らせるかどうかが課題となるが、もう一つ、懸念がある。

 ヤンキースは目下、20連戦のまっただ中。ヤンキースとしては、ひじに不安を抱える田中に無理をさせたくないが、田中は3回連続で中4日で投げなくてはいけない。昨年は日程を調整して、中4日で登板させたのは5回だけだったが、いきなりの試練である。

 そのことはジョー・ジラルディ監督も認めた。

「彼なら適応できるだろうが、テストにはなる」

 田中はそのテストのパスできるだろうか。疲労をどう抜いていくのか。ひじの不安は消えたのか。

 披本塁打の件とともに、田中は今、試されている。

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田中はベストではないが先発陣では圧倒的にベストだ

ヤンキース先発陣の中では唯一、7回以上を投げている田中。(Getty Images)

TANAKA NOT AT HIS BEST, BUT HE IS THE YANKEES' BEST STARTER BY A LOT SO FAR

 開幕して約3週間が経ったが、これまでのところヤンキースの先発陣の中では田中将大だけが安定していて、2度も7回まで投げた。24日時点で他に7回まで投げた投手がいないという散々な状況になっており、田中が2試合連続で7回まで投げると、チームは滅多にないチャンスを無駄にしなかった。

 23日の登板では、7回まで投げて5安打、2失点。マウンドを降りたときには1点ビハインドだったが、その裏に同点とすると、9回にブレット・ガードナーが本塁打を放ち、サヨナラ勝ちを収めている。あの日の田中は、調子がもう一つ。だが、悪いなりに上手くまとめ、レイズ打線に的を絞らせなかった。

 今季のヤンキースは勝ったまま、あるいは同点で試合終盤を迎えれば、デリン・ベタンセス、アンドルー・ミラー、アロルディス・チャプマンという3人の強力なブルペンがいるので、接戦をものに出来る可能性が高くなる。ただ今年は、田中以外の先発投手がそこまで踏ん張れず、後ろに繋げないためにこうして低迷しているわけだが、だからこそ、まだ本調子ではないとはいえ、田中の奮闘が際立つ。

 ちなみに目下のところ、田中の防御率は2・92。他の先発投手はといえば、24日の試合を終えた時点で、マイケル・ピネダが6・95、ネーサン・エオバルディが6・11、CC・サバシアが5・28、ルイス・セベリノが4・86と散々。こうなってくると中継ぎ陣に負担がかかっており、だからこそ、田中が7回まで投げてくれることは、他の投手にとっても大きな助けとなる。

 今後、他の先発投手が復調してくれば、ブルペンだけではなく、田中の負担も取り除いてくれるはずだが、果たしてそれはいつになるのか。

 ちなみに田中は今季、4試合に先発したが、自責点を2点以上与えたことはない。それでいて状態が上がっていないことを否定しないが、先ほども触れたように悪いなら悪いなりのピッチングが出来るのが田中だ。若い投手が少しでも彼から学んでくれたらというところだが、果たしてそれもいつになるやら…。

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田中は安定しているが試合終盤まで投げる必要がある

安定感を見せるも、今季最初の2試合は終盤まで投げられていない。(Getty Images)

"Tanaka's stats are solid, but he needs to get deeper in games"

 ヤンキースの田中将大が開幕から2試合に先発。まだ勝ち星がないものの防御率3・38と大きく崩れることもなく、安定した投球を見せている。このピッチングがシーズン通して続けられれば、それなりの結果を残すのではないか。ただ、過去2回の登板合わせて、わずか10回2/3しか投げていないことが気になる。これではブルペン陣に負担をかけてしまう。

 原因は、球数の多さか。先日──今季2度目の先発では、初回を切り抜けるのに29球を要し、2回を終えた時の球数は54球だった。となると、この時点で長いイニングを投げるのは無理となり、案の定、5回を終えたところでマウンドを降りた。

 球数は92球。もう1イニングぐらい投げられたかもしれないが、田中はオフに右ひじの遊離軟骨除去手術を受けており、ヤンキースとしては無理をさせられない。となると彼は今、100球で結果を出さなければならない状況だ。

 その試合を振り返って、田中は自分のピッチングをこう振り返っている。

「試合前半は良くなかった。微妙に制球が出来てなかった。それでもなんとか粘れた」

 そういう状態で、3安打、2失点なら、むしろ合格点。しかし、4四球が無駄だ。それが、彼の発言にも滲んでいる。

 ただ、ジョー・ジラルディ監督は、「最初の2イニングは、シャープだったとは言えないが、どんどん良くなった」と話し、「この2回の先発を見る限り、それぞれの球が徐々に良くなっている」とポジティブに捉えていた。まだ、シーズンが始まったばかり。投げているうちにキレを取り戻しつつあるのでは、と考えているよう。

「まだ4月。心配はしていない」

 その見方を否定する要素は今のところはないが、やや心配な点もある。彼の球速だ。

 2014年──彼がメジャーデビューを果たした年、4シームファストボールの平均球速は95・3マイルだった。昨年は、91・4マイル。今年は今のところ、90・6マイルなのである。今後、球速が上がっていけば問題はないが、この2回の先発で考えるなら、その辺りが復調を知るバロメーターとなるのかもしれない。

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田中は、開幕前のチャレンジに答えを出した

2年連続で開幕投手に指名された田中。(Getty Images)

TANAKA ANSWERS THE CHALLENGE BEFORE OPENING DAY

 31日、ヤンキースのジョー・ジラルディ監督は、田中将大を2年連続の開幕投手に指名した。予定通りということなのかもしれないが、ここまで紆余曲折があり、実のところ最後のオープン戦で開幕投手にふさわしいかどうか、田中は仕上がりを証明する必要があった。

 その最後のオープン戦は29日。その前にジラルディ監督は「状態をあげてもらう必要がある」と注文をつけている。見方を変えれば、結果を残せなかった場合、田中の開幕投手の可能性は消えていたということか。

 ジラルディ監督の不安も仕方がない。23日のナショナルズ戦で田中は、4回を投げて、9安打、7失点と散々だった。29日のフィリーズとのオープン戦は、そういう中で迎えた試合だったのだ。すると田中は4回を投げて、7本のヒットを打たれながらも1失点に抑え、結果を出した。田中自身、「前回よりもはるかに良かった」と安堵の表情を見せている。

 さて、これで開幕投手決定か、となったわけだが、なぜかジラルディ監督はこの田中の登板を見ていない。その日はもう1試合行われていて、アルコール依存症からの復活を目指すCC・サバシアが先発したため、監督はそちらの試合を見ていた。開幕投手を任せようと考えている投手の最後の登板、しかも不安がある中で見ないというのは不可解だったが、田中のことを一番理解しているラリー・ロスチャイルド投手コーチに任せ、そのロスチャイルド投手コーチがお墨付きを与えたよう。

 ジラルディ監督は言っている。

「スプリットははるかによかった。カーブもよかった。スライダーもよかった。全ての球がよかった、ということだ」

 ただ、あの試合だけで、完全に懸念が払拭できたかといえば、どうだろう。

 田中の場合、2014年7月に痛めた右ひじの靭帯のことがある。オフには骨棘の除去手術を行った。すべてが回復しているのか、という疑念はもう少し結果を出さなければ、拭えないのではないか。まずは開幕だ。4月4日、昨年のワンゲームプレーオフで敗れたアストロズを相手に腕試しとなる。

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田中は新たな懸念とともにキャンプ入りする

メジャーで3度目の春季キャンプを控える田中。(Getty Images)

TANAKA ARRIVES AT YANKEES CAMP WITH A NEW SET OF QUESTION

 ヤンキースの田中将大は間もなく、メジャーで3度目のスプリングトレーニングを迎えるが、今回も含め、毎年なんらかの懸念とともにキャンプインしている。

 1年目の2014年は、メジャー1年目ということもあり、実際にどこまで通用するのか不安視する声があった。また、7年総額1億5500万ドル(約188億円)という契約に見合うだけの投手なのかと、うがった見方もあった。

 2年目は、ひじの故障明け。一昨年の7月に右ひじの靭帯を損傷すると、手術を避け、リハビリでの復帰を目指したが、シーズン最後の登板ではレッドソックスにKOされ、昨年のキャンプが始まると“ひじの状態は大丈夫か”という問いが、何度も繰り返された。

 そして今年。田中はシーズン終了後、右ひじの遊離軟骨除去手術を受けた。決して、復帰までの道のりが険しい手術ではないが、それでもキャンプをどう過ごすのか、注目される。

 昨年の場合、ヤンキースとしてもひじの不安を考慮し、スローペースで調整させた。あくまでも開幕戦での先発を念頭に置きながら、できるだけ、ひじに負担のかからないようなスケジュールを組み、オープン戦初登板は3月12日までずれ込んでいる。おそらく今年も、同様の調整法になるだろう。田中はすでに日本で自主トレを行っているが、タンパでは他の先発投手よりもペースを遅らせ、本格的に温かくなる3月に入ってから、ペースを上げるような形になると予想できる。

 キャンプ中に何もなければ開幕投手を務めることになるが、そこを見据えながらオープン戦の登板予定を組み、またシーズンに入ってからのローテーションもまだ肌寒い4月中は、うまく試合のない日を挟みながら、中5~6日で登板できるよう配慮をするはずだ。

 中4日で登板するのは、まずはその前半の様子を見てから。そこで2014年前半のような切れを取り戻していれば、制限がなくなるだろう。これまで田中は、シーズン通して先発ローテーションを守ったことはない。今年の目標は、まずそこか。守り抜いてこそ、本当のエースとして認知される。

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右ひじの手術が来季へのさらなる不安を生み出す

右ひじに関して不安が囁かれる田中。(Getty Images)

ARM SURGERY FOLLOWS PLAYOFF LOSS FOR TANAKA, CREATING MORE QUESTIONS FOR 2016

 2年目のシーズンを終えた田中将大。ヤンキースが期待した通り、チームのエースに成長したと言っていい。アストロズとのワイルドカードゲームには田中がマウンドに上がったが、ジョー・ジラルディ監督にとってさほど難しい決断ではなかったのではないか。

 ただ、そのワイルドカードゲームで田中は期待に応えられなかった。2本の本塁打を許し、ヤンキースは0-3で完封負けを喫した。いずれも制球ミス。シーズン終盤に右太もも裏を痛め、満足な調整ができないままの登板となった。多くの人は原因をそこに求めたが、違ったのかもしれない。田中はシーズンが終わってから約2週間後に、内視鏡による右ひじの骨棘除去手術を受けた。

 ヤンキースによれば、骨棘の存在は2年前に契約する段階で認識していたとのことで、シーズン中、またシーズン直後の検査でも田中が特に痛みを訴えることはなかった。しかし、検査から1週間後にブライアン・キャッシュマンGMの元へ田中の代理人から電話があり、その時初めて田中が痛みを抱えていて、ひじが真っ直ぐに伸びず、特に彼の決め球であるスプリットが投げにくいということが明らかになった。

「手術そのものは、そんなに複雑なものではない」とキャッシュマンGM。「手術を行うとしたら、この時期がベストだと判断したまでだ。完全に復帰するまで、3カ月かかるから」

 難しい手術ではないが、それなりに復帰まで時間がかかる。ならば今のうちに、ということだが、では一体、田中はいつから痛みを感じていたのだろう。

 靱帯損傷で2カ月離脱した去年の成績は13勝5敗、防御率2・77。今季は12勝7敗、防御率3・51。決して悪くはないが、ムラがあり、昨年前半と比べれば明らかに別人。多くは昨年痛めた靱帯の影響を疑っていたわけだが、原因は骨棘だったのか。

 来季への影響が懸念されるが、ヤンキースはそれを否定している。とはいえ、少なくともキャンプは、今年の春のように慎重な調整となるのではないか。

 それ以前に、本当に間に合うのか。このオフも昨年同様、田中のひじに注目が集まる。


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田中はワイルドカードの先発に向け準備をしている

6日のワイルドカードに先発する田中。(Getty Images)

TANAKA PREPARING FOR WILD CARD START

 2日、ボルティモアで行われる予定だった試合は雨で中止となったが、6日のワイルドカードゲームに田中将大が登板することに変更はない。ヤンキースのジョー・ジラルディ監督は、4日になってようやく正式に田中が登板することを発表したが、かなり前から公然の“秘密”だった。

 田中も、発表前からそのことを隠そうとはしていない。

「もし、(ワイルドカードで投げるように)言われたら、準備をしなければ行けない。今は、その日に向けて準備してます」

 未定なのは、試合が行われるのがヤンキースタジアムなのか、敵地なのかだったが、4日の試合でヤンキースは負けたが、ワイルドカードの対戦相手であるアストロズも敗れたため、ホームで迎え撃つことになった。“ホームフィールド・アドバンテージ”を得たということである。

 田中はプレーオフ初登板だが、日本の楽天時代に日本シリーズでの登板がある。もちろん、2つはまるで違うものだが、プレッシャーがかかる状況というのは、メジャーデビュー戦など、多く経験している。そこに関しては、誰も懸念を持っていない。田中の先発に関して不安があるとすれば、右太もも裏の状態だろう。

 9月18日のメッツ戦で右太ももに張りを覚えると、次の先発を回避。結局、故障してからプレーオフ前に登板したのは、30日の1回だけ。その試合では、初回に3ランを許すなど、5回を投げて4失点と不安を残した。試合後、「12日間も投げていない投手のようだった」とジラルディ監督は話し、ブランクの影響を認めた。その一方で、田中本人が徐々に良くなったと話したことについては、「私もそう思う」と同意している。

 ただ、実際はどうなのか。2日、再び取材を受けた田中は、「良くなっている」と語り、ジラルディ監督も「心配していない。これまで、十分な時間を与えてきた。影響することはないだろう」とコメントしたが、仮にそうではなかったとしても、本当のことは言わないだろう。6日の先発には、いまだにギャンブル的な要素が残る。

 ヤンキースにとっては、3年ぶりのプレーオフ。1試合だけの決戦のマウンドを田中に託す。果たして、期待に応えられるか。勝てば、ロイヤルズが次の相手だが、田中は第3戦で登板する見込みとなっている。

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ヤンキースはWCゲームで田中を必要としている

今季12勝を挙げているヤンキースの田中。(Getty Images)

Yanks Need Tanaka Right For the Wildcard Game

 ヤンキースは、1試合だけで雌雄を決するワイルドカードゲームに進出することが濃厚となった。一発勝負。リスクのある戦いだが、ヤンキースは、その試合に太ももの裏に張りを抱えた投手を送り出そうとしているのだから、それもまたギャンブルだ。

 その太ももに張りを訴えている投手とは、もちろん田中将大のこと。18日のメッツ戦で、バントをして走り出した際に右太もも裏に違和感を覚えた。当初は軽症との見方があり、先発を1回飛ばすだけで復帰できるかと思われたが、現時点では次の登板が未定だ。

 25日、田中はブルペンに入って31球を投げたものの「まだ、少し(張りを)感じる部分はある」と話し、違和感が残っていることを明かしている。チームとしては、ブルペンの後に本人からGOサインが出ることを期待したが、逆に不安を残した。

 それでもヤンキースは、10月6日に行われるワイルドカードゲームに田中を先発させる見込み。投げてみなければ状態は分からないが、それでも田中に今季を託そうとしている。

 もっとも、田中自身は太ももに多少張りがあっても投げるつもりだ。そもそもこの張りが完全に消えるには時間がかかり、プレーオフを通して張りを感じたまま投げることを覚悟している。過去に対処した経験があるのか、田中は楽観的だが、ジョー・ジラルディ監督はこれからある決断を迫られる。

 10月6日の決戦の前にもう一度先発させるかどうか。出来れば復調をはかる意味でも先発させたいが、そこで再発したら…。レギュラーシーズン中の先発を飛ばすことも出来るが、その場合はぶっつけ本番でプレーオフに臨むことになる。それが最善の策かどうか。

「私は(田中が6日登板できる)自信がある」とジラルディ監督。ただ、その前にどんな過程を辿るのだろう。

「状態を正確に見極める」としているが、監督は難しい判断を迫られる。

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ヤンキースはワイルドカードを見据え、田中に休みを与える

18日のメッツ戦に先発した田中。(Getty Images)

Yankees weigh added rest for Tanaka to prepare him for potential wild card start

 ヤンキースのジョー・ジラルディ監督は19日、当初のプランでは、田中将大を23日のブルージェイズ戦に登板させるつもり“だった”と明かした。過去形なのは、18日に田中を先発に立ててメッツに敗れたことで、状況が変わったからだ。

 そもそも田中が23日に先発するとしたら、3試合連続で中4日となる。今季は彼のひじの状態を考慮して中5日ということが多かったが、プレーオフを見据えたとき、回復時間が短くなる中4日で投げることは、リスクを負うことにもなる。

 それでも無理をさせたかったのは、まだ地区優勝の望みがあったからだが、18日の試合を落とした段階で、ア・リーグ東地区首位のブルージェイズとのゲーム差は4・5に広がった。この差は小さくなく、狙いを地区優勝ではなく、ワイルドカードでプレーオフに進出する2チームで行われる1試合だけに定めるなら、田中を23日に中4日で投げさせる必要性はなくなる。

 そして20日、その状況がさらに変わった。想定が根底から崩れたと言っていい。

 18日の試合で田中が、2回にバントをして走り出した時、右太ももの裏に張りを覚えた。19日になって本人がジラルディ監督に伝えると、チームに帯同もせずにニューヨークで治療に専念することになった。

 仮に23日の先発をずらす場合、それは地区優勝を諦め、1試合で雌雄が決するワイルドカードゲームに標準を絞る処置だった。しかし、こうなっては、最悪の場合、そのワイルドカードゲームに投げられるかどうかも、わからなくなった。

 幸い、田中は軽症とのこと。先発を1回飛ばすだけで済むだろうとチームは考え、田中本人も、ジラルディ監督に右太もも裏の張りのことを伝えたとき、23日は投げられると伝えたというから、程度は軽いと感じているのではないか。

 いずれにしても、一時的とはいえ、田中は戦列を離れることになる。今後は、10月6日に行われるワイルドカードゲームから逆算して、田中の先発予定が決まるのではないか。

 ざっと計算すると、9月29日のレッドソックス戦に復帰した場合、中6日でワイルドカードゲームとなる。前回登板した18日から29日までは、中10日。これだけあれば、右太もも裏の張りも解消されるのではないか。

 田中のレギュラーシーズンの登板はあと1試合。そして、自身初のプレーオフのマウンドに上がる。

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田中はプレーオフの先発1番手であることを証明した

プレーオフでも先発1番手であることを自ら証明した田中。(Getty Images)

"Tanaka shows again why he should be Yanks' first choice in the playoffs"

 現実的な話をすれば、ヤンキースはワイルドカードでプレーオフに出場する可能性が高くなった。先週、ア・リーグ東地区首位を走るブルージェイズと4試合を行い1勝3敗。3連敗の後、田中将大が一矢を報いたが、その時点でのゲーム差は3・5。14日の試合を終えてその差は3ゲームに縮まり、直接対決を3試合残していることを考えれば、逆転不可能な数字ではないが、3ゲーム差は意外に大きい。

 ワイルドカードでプレーオフに進んだ場合、もう一つのワイルドカードチームと1試合だけの決戦を行う。そこで先発するのは当然、チームのエースということになるが、おそらくこのままいけば、田中がその責を担うのではないか。一部では、ルーキーのルイス・セベリノを推す声もあるが、13日の先発で田中はメジャー屈指の得点力を誇るブルージェイズを7回まで4安打、無失点に抑え、一番信頼できる投手であることを改めて証明。プレーオフは初登板となるが、田中は日本でプレッシャーのかかる試合を経験済み。やはり、彼しかいない。

 ジョー・ジラルディ監督も、ブルージェイズ戦での田中の快投を振り返り、「我々が勝つには、相手打線を完全に抑え込む必要があったが、田中は期待通りのピッチングをしてくれた。大きな、大きな1勝になった」と高い評価を与えている。敵将のジョン・ギボンズ監督でさえ、「彼は、我々にとって厄介な存在だ」と、その力を認めざるを得なかった。

 セベリノは、デビューから6試合の防御率が2・04と新人らしからぬ活躍を見せ、その勢いに乗るのも一つの手段と映った。しかし、4日のブルージェイズ戦では、2回1/3を投げて6失点。見事にノックアウトされた。この1試合がもたらしたマイナスイメージは小さくない。

 もちろん、「多くの試合が残っている」として、まだジラルディ監督は地区優勝の望みを捨ててはいない。「1ゲームプレーオフなんてゴメンだ」。しかし、ここに来て田中の状態が上がっていることで、ヤンキースは絶対的な存在を得た。もはや一発勝負への怖さは消えているのではないか。仮に地区優勝すれば、田中がシリーズ初戦で先発することも確実。今季は故障もあり、不安定な状態が続いたが、田中はヤンキースが最も必要とするときに、最も理想的な状態に仕上がってきた。

【アンソニー・マッキャロン】

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通常の登板間隔は、田中にとってリスク?

次回は中4日で先発マウンドに上がる田中。(Getty Images)

Tanaka a risk on regular rest?

 9月2日、ヤンキースの田中将大は中4日で先発マウンドに上がる。

 今季、中4日で先発するのは3度目だ。これまでヤンキースは、通常の中4日ではなく、中5日、あるいは前回のように中6日で先発させてきたが、もうそういう状況ではないということか。CC・サバシアが右ひざの負傷で故障者リストに入り、ただでさえ先発投手が一人少なくなった。

 ヤンキースのジョー・ジラルディ監督も、「もうそうしなければいけないときだ」と話し、続けた。「我々の投手陣には、ケガ人もいる。前回の登板(ブレーブス戦)では、多くの球数を投げたわけではない(100球ちょうど)。中4日で投げたとき、彼の球が走らないというわけではないので、ここではいかなければならない」。

 そこにはもちろん、リスクがある。ヤンキースが田中の起用において慎重だったのは、昨年のケガのことがある。7月に右ひじの靭帯を痛めた田中に無理をさせられない。今年は必要とあれば、先発ローテーションを6人で回し、田中に回復の時間を与えた。そのことはブライアン・キャッシュマンGMも明言している。

「田中に、通常よりも多くの休みを与えるのには、もちろんわけがあってのことだ」

 しかし、ジラルディ監督が口にしたように、ヤンキースにはもう余裕がない。ア・リーグ東地区の首位をブルージェイズに譲り、現時点ではワイルドカードでプレーオフに進む可能性は高いが、あくまでもヤンキースの狙いは地区優勝。そのためには田中にフル回転してもらう必要がある。

「必要なら、もちろん行きます」と田中。「それ(登板間隔)はチームが決めること。どんな状況でも行く準備はできています」。

 体の状態についても、「いい」と田中は話し、「スタミナも問題ない」と力強く語っている。

 チームとしてはその言葉にすがるしかない。中4日で登板することのリスクはあるが、シーズンは残り約1カ月。ブルージェイズを射程圏内に捉えながらの、負けられない試合が続く。

【ピート・カルデラ】

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ヤンキースの10月は安定感を取り戻しつつある田中次第?

前回登板のインディアンス戦で今季6敗目を喫した田中。(Getty Images)

Yanks' October Might Depend on Tanaka Finally Finding Consistency?

 今の田中将大は、去年前半の田中将大ではない。いや、去年の姿に近づきつつあるものの、まだそこには達していない。

 15日、強力打線を誇るブルージェイズを相手に完投。これで波に乗るかと思いきや、前回21日のインディアンス戦では7安打、4失点で今季6敗目を喫している。

 インディアンス戦の投球について、「トロントの時のような球を投げることができなかった」と田中。ヤンキースのジョー・ジラルディ監督は、「前回と比べれば、思うようなところへ投げられなかったのではないか。それが問題に繋がった」と制球に難があったと指摘。田中自身、ストライクを先行させられなかったことで、リズムに乗リ切れなかったようだ。

 その一方で、捕手のブライアン・マキャンは「正直言って悪いとは思わなかった」と話している。おそらくこの評価も正しい。インディアンス戦では、イニングによって内容にばらつきがあった。制球が乱れることもあれば、昨年のように圧倒的に抑えることもあった。

 ヤンキースとしては、とにかく田中に昨季前半のような安定感を取り戻して欲しいと考えている。ローテーションも田中の右ひじの負担に配慮し、中5日ということも少なくない。今回は中6日で28日のブレーブス戦に先発する。

 田中の状態に波があることの理由は分からないが、徐々に取り戻しつつあることだけは確かだろう。ただ、もう田中が完全復調するのを待っている余裕がなくなって来ている。

 C.C.サバシアが23日の試合で右ひざを痛め、故障者リストに入った。マイケル・ピネダも故障が多く、不安が多い。そういう中で、プレーオフに出場し、勝ち進むためには田中の右腕がカギとなる。

 その期待に応えられるかどうか。

 現在、ア・リーグ東地区の首位をブルージェイズと分け合っているヤンキース。引き離すには、田中が昨季前半のような活躍をする必要があるだろう。田中は今後、これまで以上に大きなものを背負ってマウンドに上がることになる。

【アンソニー・マッキャロン】

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田中はもっとも大切な試合で結果を残した

首位攻防戦で完投勝利を挙げたヤンキース田中。(Getty Images)

 昨年1月に7年総額1億5500万ドル(約192億7000万円)でヤンキースと契約した田中将大。その巨額契約もあって昨年は登板する度に大きく注目されたが、7月に右ひじの痛みを訴えるまで十分すぎるほどのインパクトを残した。言い方を変えれば、大きな期待の中で結果を残してきたといえるが、15日のブルージェイズ戦は、これまでとは違ったプレッシャーを感じながらマウンドに上がったのではないか。

 状況はまさに8月の天王山。7月28日の段階でア・リーグ東地区の首位を走り、4位のブルージェイズに8ゲームをつけていたヤンキースだが、8月12日に逆転された。その後1位に返り咲き、田中が登板した15日は、負ければ再び2位に転落するというブルージェイズとの直接対決だった。

 その前の登板である9日は、やはりブルージェイズ戦に先発して負け投手となった田中。今回は真価が問われ、田中自身「大切な試合」と位置づけて臨み、そういう試合での田中はどんなピッチングをしたかといえば、9回を完投。リーグ屈指の強打を誇るブルージェイズ打線を1点に抑えている。

 最後の16人のうち15人を抑え、反撃する隙を与えなかったが、なにより光ったのが5回のピッチング。無死満塁のピンチを迎えながら、ジョシュ・ドナルドソンの犠牲フライによる1点で凌いだ。あそこを1点で抑えたことで逆に流れを引き寄せ、6回表のマーク・テシェイラの勝ち越し本塁打を呼び込んでいる。

 ただ、9回もマウンドに上がったことには少々驚きがあった。田中が最後に完投したのは昨年6月28日だが、その2週間後に右ひじの靭帯を痛めた。よって、それ以来田中の起用に関しては慎重で、8回終了時点の球数が104球だったことを考えれば交代の可能性が高かった。しかし、ジョー・ジラルディ監督は続投を決断。「彼は投げたがっているように見えた」と話したが、裏にはブルペンを休ませたいとの思惑が覗いていた。前の2試合でセットアッパーのデリン・ベタンセスと守護神アンドルー・ミラーが連投。できればこの日は休ませたかった。田中が完投したことで彼らは一息つけた。

 田中の完投は、ブルージェイズとのゲーム差を広げたということだけではなく、ブルペンに休養を与えることができ、今後を見据えたときにさらに大きな意味を持ったと言えそうだ。

【ピート・カルデラ】

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