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四竈衛のメジャー徒然日記

青木アストロズ首位快走理由 ベテラン×若手=勢い

交流戦 アストロズ対ブレーブス 6回裏アストロズ2死三塁、青木宣親は中前打を放つ(2017年5月9日撮影)

 長く、厳しい公式戦を戦い抜くうえで、重要な要素はたくさんあるのでしょうが、そのひとつとして「ベテランの存在」は欠かせないのではないでしょうか。純粋な戦力としてだけでなく、若手に優しくアドバイスをすることもあれば、時には小言を言う「お目付け役」であったり…。だからといって、胸に「C」マークを付けて、キャプテンを名乗る必要もありません。ただ、強いチームには、必ずと言っていいほど、実績を持ちつつも、渋く、味のあるベテランがいるものです。

 開幕以来、ア・リーグ西地区で首位を快走するアストロズは、まさにその典型のようなチームです。過去数年来、大胆な世代交代を進め、アルチューベ、コレア、スプリンガーらが中心選手として台頭してきました。それでも、昨季は手の付けられないような爆発力を発揮する一方で、戦いぶりが安定せず、最終的に地区3位に終わり、プレーオフ進出を逃しました。ある意味で、若さと脆さが同居していたのかもしれません。

 そこで、ア軍首脳は、オフ期間、ベテラン選手の補強に専念しました。メジャー20年目の強打カルロス・ベルトラン外野手(40)をはじめ、ブライアン・マキャン捕手(33)、青木宣親外野手(35)、ジョシュ・レディック外野手(30)と、実績、経験とも豊かな選手を次々と獲得しました。コレアら若手が、今後の「チームの顔」として大成していくためにも、生きた教材は不可欠というわけです。実際、今季のアストロズは、試合に大勝してもはしゃぎすぎず、大敗しても落ち着いています。そんなチーム状況に、AJ・ヒンチ監督も確かな手応えを感じ取っているようです。「ここ数年、チームを作っていく中でも、毎年違う。ただ、今年のチームは、とてもエネルギーに満ちているんだ」。

 ア・リーグ東地区で好スタートを切ったヤンキースにしても、若手とベテランの融合が、新たな勢いを生んでいます。サンチェス、ジャッジらの若手野手が台頭したことで、チーム内のバランスが良化したわけです。さらに、オフにはメジャー14年目のマット・ホリデー外野手(37)を獲得。ジーター引退後、リーダー不在と言われたヤ軍でけん引役を務めています。ジラルディ監督が「若手がベテランを刺激し、ベテランも奮起する。チームとしてすばらしいこと。ホリデーは我々のチームの大きな部分を占めている」と話すように、ベテランと若手の「化学反応」が、勢いやパワーを導き出しているようです。

 大変無責任ですが、アストロズ、ヤンキースの今季の最終成績がどうなっているかは不明です。ただ、年代層の偏ったチームは、どうしても安定感を欠く傾向があります。どのチームがペナントを制するにしても、ベテランと若手のバランスの良さは欠かせないような気がします。

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メジャーで大流行 データ偏重野球は完璧なのか?

インディアンス・リンドア

 ごく一般的に、米国人は大ざっぱで、日本人はきちょうめん、というイメージがあるようですが、野球に限っては少しばかり違う側面があります。きちょうめんというより、米国人の「数字好き」は、メジャーではかなり顕著に表れています。

 古くは1970年代からセイバーメトリクスによる分析が盛んになり、さまざまな測定基準により、各選手の成績が数値化されるようになりました。さらに、2015年からは全30球団が「スタットキャスト」を取り入れ、グラウンド上での多種多様なプレーを、数値で計測するようになり、話題を集めました。「スタットキャスト」とは、レーダーとビデオでプレーを分析し、科学的に数値化するものです。

 たとえば、現時点で今季の最速投球は、ジョー・ケリー(レッドソックス)が4月28日のカブス戦でマークした102・2マイル(約165・5キロ)。また、打球速度は、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)が、同日のオリーオルズ戦で本塁打を放った際の119・4マイル(約192・2キロ)というような感じです。このほか、野手がファインプレーの際に走った距離や到達時間、盗塁の際のリード幅やスピードなど、多岐に及んでいます。

 だからといって、野球の「質」まですべて数値やデータで判断できるわけもありません。野球の科学化が進み始めた頃、イチローは「コンピューターを操っている人が、コンピューターに操られている感じがする」と話していました。実際、ほとんどの選手は、そのような細かい数字は気にかけていないのが実情です。ボールのスピン数を気にして投げる投手もいなければ、飛距離を気にして本塁打を狙う選手もいません。ケリーが投げた165キロの速球にしてもリゾにファウルされましたし、その一方で、上原(カブス)のように140キロ前後でも空振りを取り続ける投手もいます。

 球団方針としてデータを重視するチームが増加し、特に守備での「シフト」は大流行どころか、すっかり定着していますが、これにしても「絶対」ではありません。5月20日の「アストロズ-インディアンス戦」では、初回、イ軍のリンドア、ブラッドリーが、ともにシフトの逆を突いて連打しました。その後、ア軍はピンチをしのぎましたが、さすがに次の打席以降は、シフトを敷かなくなりました。ア軍ヒンチ監督は「確かに数字などの情報も大事だが、私はフィールド上での感覚、感情、情熱も大事にしたい」と説明。「スタットキャスト」の細かい数値については、「いろいろなファンが、それぞれに楽しんでくれればいい」と話しています。

 データや数字で対策を練ることも大事なのでしょうが、プレーするのは、あくまで生身の人間です。大事なのは、数値に頼りすぎることのない「使い方」のような気がします。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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メジャーの国際化と米国社会の根深い人種問題

 オリオールズのアダム・ジョーンズ外野手が、遠征先のボストンで人種差別行為を受けたことが、メジャー球界で話題となっています。その後、サバシア(ヤンキース)やイチロー(マーリンズ)ら他の選手がコメントするなど、波紋を広げていますが、人種差別問題はメジャー球界だけでなく、多民族国家である米国社会の根深い問題でもあります。

 言うまでもなく、一部ファンの言動や行為は許されるものではありません。その一方で、メジャー球界が、人種や国家を問うことなく、野球人口の底辺拡大のために、長い年月をかけて国際化を進めてきたことも事実です。

 1947年にブルックリン・ドジャース(現ロサンゼルス)のジャッキー・ロビンソンがアフリカ系米国人として初めてメジャーデビューを果たし、有色人種に門戸が開放されました。それ以来、世界各国から優秀な選手がメジャーに集まるようになりました。実際、今季の開幕時点で、メジャーの25人枠(DL入り選手を含む)に登録された米国外出身選手は、19カ国・地域から過去最多となる259人。全体の29・8%を占めるほどになりました。

 たとえば、マリナーズの場合、現在(5月4日時点)の先発ローテーション5人には、実に国際色豊かなメンバーが並んでいます。

 岩隈(日本)

 ミランダ(キューバ)

 ガヤード(メキシコ)

 デジョング(米国)

 パクストン(カナダ)

 ベネズエラ出身で、故障離脱中のヘルナンデスが復帰しても「5カ国ローテーション」は変わりません。野手を含めると、ドミニカ共和国、プエルトリコ、パナマと、出身国はメジャー最多の9カ国にも及んでいます。

 米球界では、選手だけでなく、全世界の報道陣に対しても門戸が開かれています。全米中のスタジアムでは、地元米国に加え、プエルトリコ、ドミニカ共和国の中南米諸国、日本、韓国、台湾など、実に多様な人種が、記者席や放送席からメジャーリーグの試合を伝えています。他国のスカウトや編成担当者の受け入れ態勢も整備されるなど、少なくともそこには人種や民族による格差は見当たりません。

 依然として、社会全体が人種差別を抱える一方で、メジャー球界では着実に国際化が進んでいます。今回の一件では、「暗部」と「寛容さ」を併せ持つ米国の実情が、あらためて浮き彫りになったような気がします。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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畏れ入った1号、今年のイチローは本塁打数にも注目

19日(日本時間20日)今季初本塁打を放つマーリンズのイチロー(AP)

 思わず、畏れ入りました、と言ってしまうようなひと振りでした。マーリンズのイチローが19日(日本時間20日)のマリナーズ戦の9回表、今季1号本塁打を放ちました。3年ぶりに古巣シアトルへ凱旋(がいせん)した3連戦の最終打席。試合後、イチロー自身が「まあ、イメージはあるじゃないですか。ただそれが実現するかどうかは別の話で。そうなったら、そりゃいいよなあ、でも、なかなか難しいよなということでしょう」と明かしたように、まさに狙って打ったアーチでした。

 かつてイチローは、「ホームランは狙って打つもの」という趣旨のコメントを残したこともありますが、本当に狙って打ってしまうのですから、さすがです。イチローといえば一般的に「安打製造器」のイメージがあるでしょうが、その長打力はメジャー球界でもよく知られています。試合前のフリー打撃で、サク越えを連発するのは毎日のルーティン。2階席への特大弾も珍しくなく、あまりにミート力が正確なこともあり、かつてはオールスター前日のホームラン競争への参加が、真剣に取り沙汰されたほどです。

 もっとも、2014年以降は3年連続で1本塁打。代打での出場が増えたこともあり、「狙っていい場面」が限られたことが、本塁打減の理由にひとつになったのかもしれません。

 その一方で、今季開幕後には、持ち前の長打力を発揮する「兆し」をのぞかせていました。初スタメンとなった4月14日のメッツ戦。2-2の同点で迎えた6回裏2死二塁、カウント3-0となっても、イチローに四球への意識は皆無でした。迎えた4球目。快速右腕シンダーガードの速球を仕留めにいきました。右中間最深部への打球は、フェンス前のアンツーカー部分で中堅グランダーソンに好捕されましたが、ヘッドを効かせたスイングスピード、打球の角度とも、「本塁打近し」を感じさせるひと振りでした。

 一般的に、年齢を重ねた選手の長打力が衰えることはあっても、飛躍的に伸びることは考えにくいかもしれません。ただ、イチローの場合、もともと長打力がなかったわけではなく、どちらかといえば、制御してきた感があります。実際、1号を放った試合後、今季の打撃について「いくつかの事をやっていますよ。具体的には言わないですけど」と、謎めいたコメントを残しています。

 今季3試合目のスタメンで放った初アーチ。これまでは安打数ばかりがクローズアップされてきましたが、今年のイチローは、本塁打数にも注目が集まるかもしれません。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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元中日パウエル氏、青木の姿に日本野球の良さ再認識

アロンゾ・パウエル氏(写真は2008年2月20日)

 日本でプレーした経験のある外国人選手が、現役引退後、米国で指導者となっているケースは、今や珍しくありません。

 かつて中日、阪神でプレーし、1994年から3年連続で首位打者に輝いたアロンゾ・パウエル氏(52)も、その1人です。現在は、アストロズの打撃コーチ補佐として、毎日、試合前の打撃投手を務めながらコレア、スプリンガーら若手選手の指導に励んでいます。そんなパウエル打撃コーチにとって、青木宣親外野手の加入は、あらためて日本の野球を思い起こす機会となったようです。

 アストロズといえば、アルテューベ、コレアら若い野手が主軸を務め、破壊力抜群の打線を売り物にする一方で、粗削りな部分も目立っていました。昨季は、チーム打率2割4分7厘(メジャー24位)と低迷しただけでなく、三振数は1452個(同4位)。勢いに乗った時の強みはあっても、シーズンを通すと好不調の波が目立つ印象を残しました。そんなチーム事情もあり、ア軍首脳陣はオフ期間、三振数が少なく、出塁率の高い青木の獲得に動いた背景があるのです。

 パウエル打撃コーチは、青木のプレースタイルが若手へのいい手本とになると期待しています。

 「ノリ(青木)はすごくクレバーな選手。彼は状況に応じて、いかにプレーすべきかをよく理解している。ただ、今は開幕して間もないから、しばらくはいろんな選手をミックスしながら起用している。チーム内に競争があるのは、とてもいいこと。結果を残していけば、どの選手にもチャンスはあるんだ」。

 実際、開幕後の青木は、出場機会が不定期ながらも、23打席で三振はわずか1、出塁率4割9厘(4月14日現在)と、期待通りの働きを見せています。パウエル打撃コーチは、チームプレーに徹する青木の姿を見るたびに、日本の野球の良さを再認識するようです。

 「今でも、日本でプレーした当時のことは忘れられないし、いろんなことを学んだよ」。

 日米それぞれの野球を熟知するだけでなく、真面目かつ温厚な性格。近い将来、監督や指導者として日本球界に「復帰」する可能性があっても不思議ではありません。

 パウエル打撃コーチは「監督? もちろん、チャンスがあればね」とひとしきり笑った後、「将来のことは、何が起こるか分からないからね」と、一瞬だけ、真剣な表情を浮かべていました。

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動く球「目付け」で対応、ベルトランが貴重なヒント

ベルトラン(右)から指導を受けるアストロズ青木(撮影・菅敏=17年2月23日)

 2017年のメジャー公式戦が開幕しました。いまさら言うまでもありませんが、世界各国から強者が集まるメジャーには、いろいろなタイプの選手がいます。特に、投手陣にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパンが苦しんだように、日本にはいないような個性派がそろっています。とりわけ「ツーシーム」「シンカー」と呼ばれる動く球は、米国ならではでしょう。ただ、そんなクセ球にも、メジャーの一流打者はしっかりと対応して結果を残しています。

 日本が誇る侍たちが、口々に「あんな球は見たことがない」と苦心した動く球について、メジャー通算20年目の大ベテラン、カルロス・ベルトラン外野手(39=アストロズ)が、貴重なヒントをくれました。ベルトランといえば、通算2617安打、421本塁打(いずれも開幕前の時点)、球宴出場9回の実績を持つ、現役最高のスイッチヒッターです。そんな強打者もデビュー直後はてこずったと言います。そこで工夫したのが、球筋に対する「目付け」でした。

 ベルトラン 「特に左打者の場合、シンカーは外に逃げながら沈んでいく。つまり、ボールの真ん中を見ていると、バットの芯で捉えるのは難しい。だから、僕はボールの内側、しかも下の部分を見るようにしているんだ。そしてバットを出す寸前までボールを見続けることが大事なんだ」。

 日本人投手のフォーシームの場合、ボールのリリースポイントからベース上まできれいな直線で軌道を描くため、タイミングさえ合えば捉えやすいとも言われます。ところが、動く球の場合、タイミングが合ったと感じて振っても、実際にはシンを微妙に外されてしまう、というわけです。

 かつて、ヤンキースへ移籍した直後の松井秀喜氏も動く球に苦労しました。特に「シンカー」に手を出すたびに内野ゴロを繰り返したことで、「ゴロキング」というありがたくないニックネームを付けられた時期もありました。そんな松井氏も、経験と工夫を重ねることで徐々に対応。重心を後ろ(松井氏の場合、左足)に残し、「ギリギリまでボールを引きつける」との感覚を身に付けました。

 そもそも対戦したことのない投手と対戦し、「見たこともない」ような球筋を打ち返すこと自体、高いハードルです。だからといって、WBC用として大会前に打撃スタイルを変えることも、困難でしょう。

 となると、最終的には目を慣らして対応する以外にないのでしょうか。ただ、ベルトランのヒントに説得力があるように、松井氏らメジャー経験者を「講師」として招くのも、ひとつの案でしょう。世界一奪回をより現実に近づけるためにも、米国での事前合宿、メジャーとのオープン戦増など、次回大会までに再考できる事前準備は、きっとあるような気がします。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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認知度変わったWBCだが…世界的大会には歳月必要

トロフィーを高々と上げる米国ナイン。手前はインタビューを受けるリーランド監督。手前右端は拍手するトーリGM(撮影・菅敏)

 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、開催国・米国の初優勝で幕を閉じました。過去3大会は、日本や韓国などアジア諸国でこそ盛り上がりましたが、地元米国では、世界一を決める大会というよりも、親善試合またはオープン戦の延長、のようなイベントとして見られていました。

 ところが、大会運営に危機感を感じたMLB機構が本腰を入れ始めた今回は、着実に認知度が変わってきました。事前の告知だけでなく、日本をはじめ中南米の各国、さらに米国代表の本気度が伝わったこともあり、1次ラウンドから多くのファンが球場に足を運びました。しかも、各地の試合内容は、緊迫した接戦の連続。選手達の興奮は、大会が進むにつれて、徐々に広がっていきました。その結果、5万1565人が詰め掛けた「米国-プエルトリコ」の決勝戦をはじめ、総観客者数は初めて100万人を突破。13年の前回大会から、実に23%増という結果になりました。

 さらに、専門テレビ局「MLBネットワーク」の視聴者数は32%増、グッズ関連の売り上げも、インターネットの「MLBショップ.コム」で50%、球場などで15%、特に1、2次ラウンドが行われた東京では25%と、軒並み増収が記録されました。今大会前、一部ではWBCの存続を危ぶむ声も聞かれていましたが、今大会の盛況ぶりに、コミッショナーのロブ・マンフレッド氏も、ホッとした表情でした。「すばらしい大会になった。もう少し時間はかかるかもしれないが、もっと観客が集まるようになるだろう」。

 ただ、現状のWBCが、認知度だけでなく、開催方法、意義、価値などを含め、一足飛びにサッカーW杯のような世界的な大会になるまでには、まだまだ時間を要することは確かです。メジャー取材歴35年で、米野球記者の重鎮として知られる「MLB・コム」のバリー・ブルーム記者は、「私見」として大会の問題点を指摘しました。「確かに、大会としては盛り上がってきた。ただ、今回のサンディエゴでの2次ラウンドに、米国、プエルトリコ、ドミニカ共和国、ベネズエラの4強が集まってしまうようなフォーマットは、果たして正解なのだろうか。日本は間違いなくすばらしいチームだが、組み合わせが変わった場合、この4強の中に入ってこられるだろうか」。

 同記者の見解は、4地区での1次ラウンドを終えた後、勝ち抜いた8チームを均等に分散させた2次ラウンドを米国内で行い、その後、決勝トーナメントにすべき、というものでした。

 その一方で、同記者は苦笑しながらも、言葉を続けました。

 「だからといって、観客が入るとは限らないし、ビッグマネーを投資している日本のスポンサーの問題もあるし…」。

 世界中の子供たちが憧れるような大会になってほしいと思う一方で、現実的には、スポンサーの資金なしには運営できません。WBCが、本当の意味で世界中に認知され、権威ある大会となるまでには、もうしばらくの歳月が必要なのかもしれません。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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伏兵コロンビアの躍進にWBCの意義を再確認

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が米国、メキシコでも開幕し、各地で激しい試合が繰り広げられています。大会史上初のタイブレークの激戦となった2次ラウンドの「日本-オランダ」をはじめ、しびれるような戦いが続いていますが、米フロリダ州マイアミで行われたC組では、伏兵コロンビアの戦いぶりが、注目を集めました。

 南米コロンビアといえば、2014年ブラジルW杯で日本を破り、ベスト8に入ったようにサッカーの強豪国。野球としては途上国でもあり、初めて予選から勝ち上がり、本大会へ出場した今大会も、開幕前は「格下」として見られていました。ところが、1次ラウンドでの戦いは、周囲を驚かせる「旋風」と言ってもいいほど見事でした。

 今回のチームは、キンタナ(ホワイトソックス)、タラン(ブレーブス)の両先発を除けば、ほとんどがマイナー級。他国がほぼノーマークだったのも、ある意味で当然でした。

 ところが、初戦の米国戦では、6回まで2-0とリード。最後は延長10回裏、サヨナラ負けを喫しましたが、翌日のカナダ戦では4-1で大会初勝利を挙げました。さらに、前回覇者ドミニカ共和国戦では、8回裏に3-3の同点に追い付き、9回裏1死一、三塁と、王者を土俵際まで追い詰めました。結果的に、タイブレークで敗れましたが、強豪国を苦しめた戦いぶりは、3000安打の重鎮解説者でなくとも「アッパレ」と言いたくなるような印象を残しました。大砲や剛球投手は不在でも、細かなデータに基づいた堅い守備、コンパクトにつなぐ打撃をベースにする堅実なスタイル。実際、米国リーランド監督は「コロンビアには脱帽した。信じられないほどで、エネルギーあふれるプレーだった」と、賛辞の言葉を惜しみませんでした。

 同国のプロリーグは、各地の4チームで、開催期間は毎年11月から1月までの3カ月間。現行の方法で20年以上継続している一方で、集客、スポンサーによる資金面を含め、運営上、決して良好とは言えないそうです。ドミニカ共和国に敗れ、1次ラウンド敗退が決まった直後、ウルエタ監督は涙交じりに振り返りました。「世界中を驚かせるまで、あと90フィート(約27メートル=塁間)足りなかった。望んでいた結果ではなかったが、いろいろなことを示すことができた。そのことはハッピーだし、満足している」。今回の大躍進が、コロンビア国内で野球熱が高まるキッカケになるとすれば…。

 それこそが、WBC開催の本当の価値、意義のような気がします。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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ダルビッシュ完全復活 サイ・ヤング賞も夢ではない

レンジャーズ・ダルビッシュ

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の開幕を目前に控え、日本国内では侍ジャパン一色のようですが、メジャーでは着々とシーズン本番への準備が進んでいます。日本人メジャーでは、青木宣親外野手(アストロズ)がWBCに出場しますが、他の日本人選手も順調な仕上がりを見せています。とりわけ2015年3月のトミー・ジョン手術からの完全復活を目指すダルビッシュ有投手の充実ぶりは、目を見張るものがあります。

 昨年5月、メジャーで復帰登板を果たしたとはいえ、ダルビッシュにとっての昨季が、中長期的な視点からも、リハビリの「延長」の領域であったことは否定できません。復帰直後の交流戦で打席に立った際、メスを入れた右肘への負担を考慮して左打席に立ったように、常に患部を気遣う日々でした。ところが、今キャンプでは手術した事実を、思わず忘れてしまうかのように、フルメニューをこなしています。

 ちょうど1年前のこの時期、ダルビッシュは全体練習が始まる前にウオーミングアップを済ませ、1人でブルペンへ向かい、少しずつ投球練習を本格化させていた段階でした。マスコミや周囲が復帰時期を話題にしていた一方で、ダルビッシュ自身は「Xデー」に固執することなく、慎重に復帰登板を目指していました。「去年の方が気楽にやっていましたね」。マイナーでのリハビリ登板を終え、メジャー復帰戦を前にしても、常に「リハビリ継続」の感覚を持ち続けていました。

 その分、今季への意気込みは格別です。他の先発陣と同じメニューを消化し、オープン戦でも序盤から投げ始めました。渡米後、めったに投げていなかったスプリットも解禁。投球の幅と「のりしろ」を広げつつ、バージョンアップに取り組んでいます。

 右肘の傷が完全に癒えた2017年。「今年は気が引き締まっているような気がします」。2012年のデビューイヤーに16勝を挙げた快速右腕にとって、今季は6年契約の最終年。並外れたポテンシャルを持つダルビッシュが、万全を期して臨むとすれば、傑出した成績、さらには日本人初のサイ・ヤング賞を獲得しても、だれも驚かないような気がします。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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マエケン余裕のキャンプ「2年目のジンクス」無縁

マエケン体操をするドジャース前田

 「去年よりスムーズな感じで終われたと思います。(練習の)流れもつかめてますし、チームメートともなじめているので…」。

 キャンプ初日の全体練習を終えたドジャース前田健太投手は、アリゾナの抜けるような青空の下、すがすがしい表情で振り返りました。居並ぶカメラの放列に一挙手一投足を追われつつ、やや緊張気味に周囲の動きを気にしていたメジャー1年目と違い、練習中には同僚とジョークを言い合い、快調なテンポでブルペン投球をこなす姿には、やはり2年目の余裕が感じられました。

 ちょうど1年前の春季キャンプ当時、前田は笑顔を浮かべながらもルーキー特有の緊張感をにじませていました。「いい環境」と言う一方で、「(スタッフや選手の)名前も覚えないといけないし、慣れていかないといけない」と、練習メニュー以上に環境への対応に心を砕いていました。しかも、ローテーションの一角として計算されていたとはいえ、メジャーでの実績は「ゼロ」。オープン戦の当初から結果を残し、アピールしなくてはいけない立場でした。

 その1年後、前田は当時の状況を、ある意味で客観的に思い起こしていました。オフ期間は、広島退団、メジャー球団との移籍交渉、引っ越し、テレビ出演…と、過去に経験のないほど多忙な毎日で、十分な練習時間を確保できる状況ではありませんでした。ドジャース移籍決定後も、慌ただしい毎日が続いた結果、アリゾナでキャンプイン。急仕上げでオープン戦に臨み、そのまま公式戦開幕を迎えました。

 結果的に、開幕戦初勝利をはじめ、シーズンではチームトップの16勝を挙げる活躍を見せましたが、反省点も残りました。「もっとゆっくりやれば良かったですね。ちょっと急作りで…。中盤から終盤にペースが落ちましたから」。特に、ポストシーズンでは納得のいく投球ができず、3試合に先発しながら未勝利。その悔しさは、今も消えていません。

 昨季は、シーズンを通して登板間隔に余裕を与えられたり、1試合の球数も極力軽減されていましたが、今季は主力としてフル稼働が期待されています。

 「自分のやりたいことを、やりたいリズムでできると思います。しっかり1年間ローテーションを守れることを証明したい。やることはいっぱいあると思います」。

 昨季の手応えと反省を冷静に分析したうえで、今後を見据える前田に、「2年目のジンクス」は無縁のようです。

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選手の錯覚ではない、長~いメジャーキャンプ

 日本から遅れること2週間。メジャーでも春季キャンプがスタートしました。今季は、8球団に10人の日本人選手が所属。招待選手として、メジャーキャンプに参加しているダイヤモンドバックス中後(なかうしろ)悠平投手は「日本のキャンプ初日よりも楽にできたかなと思います」と、スッキリした表情で「初メジャー」を振り返りました。

 メジャーのキャンプは2月中旬に始まり、その数日後、野手組が合流し、ようやくチーム全員が顔をそろえます。午前中に行われる全体練習の時間は2~3時間前後で、ランチタイムはなく、その後は基本的に自由時間。同僚とゴルフを楽しんだり、家族とショッピングに出かける選手も少なくありません。現実的には、2月1日に一斉キャンプインする日本の方が開幕までの期間は長いのですが、それでも、ほとんどの日本人選手は「メジャーのキャンプは長い」との印象を口にします。

 というのも、2月下旬にキャンプを打ち上げ、その後、全国各地でのオープン戦に向かう日本の場合、キャンプ地を離れる時点で「ひと区切り」が付きます。ところが、メジャーの場合、2月下旬にオープン戦が始まっても、基本的にキャンプ地から動くことはありません。つまり、同じ場所に約50日前後滞在するわけです(フロリダ州内の長距離遠征の場合、宿泊するケースはありますが…)。しかも、日本の「3勤1休」「4勤1休」のような習慣はありません。例えば、今年のドジャースの場合、完全休養日は3月9日の1日だけ。ダブルヘッダー6回を含め4月1日までに計41試合のオープン戦が予定されています。

 これほど多くの実戦をこなすわけですから、朝から夕暮れまでユニホームが泥まみれになるような猛練習を続けていては、どんな屈強な選手でも体が持ちません。基本練習の反復などに多くの時間を割く日本に対し、メジャーの場合、技術面は「個人の裁量」。練習過多で故障しないためにも、疲労回復や体調管理も重要なポイントになります。そんな環境に対応しつつ、オープン戦で高いレベルの結果を残さない限り、開幕メジャー枠は勝ち取れません。

 オープン戦の最終戦までが春季キャンプ-。

 「メジャーのキャンプが長い」と言われるのは、決して選手の錯覚ではないような気がします。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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大谷は「世界の宝」WBC欠場もメジャー評価は不変

日本ハム大谷

 メジャーのキャンプに先駆けて2月1日、アリゾナ州ピオリアで日本ハムのキャンプが始まりました。初日のグラウンドには、日本からのツアーで訪れた熱心なファンに交じり、メジャー各球団のスカウトの姿も数多く見られました。昨季108年ぶりに世界一となったカブスをはじめ、レッドソックス、ドジャース、レンジャーズなど、日本となじみの深い球団の関係者が集結しました。もちろん、お目当ては大谷翔平クン。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)直前の仕上がりを見るだけでなく、今オフにもメジャー移籍の可能性が確実視されるだけに、徹底マークを続けているというわけです。

 大谷への注目度の高さは、いまさら言うまでもありません。昨年2月の同キャンプでは、オープン戦の登板時には複数のGMをはじめ100人以上のメジャー関係者がネット裏にズラリと陣取り、大谷の動きをチェックしました。当初は投手としての評価が先行していましたが、現在では打者としての評価も「◎」。メジャーでも「二刀流」を生かせるか否か、が獲得へのカギを握っており、シーズン中もほぼ全球団がアジア担当スカウトらを日本へ送り込み、その動向を見守ってきました。

 今回、故障のため、大谷のWBC出場は正式に見送られました。大谷本人をはじめ、侍ジャパン、日本のファンにとっては極めて残念な事態となってしまいましたが、メジャーのスカウト陣の感覚は少しばかり異なっていました。各国がベストメンバーで挑む真剣勝負を期待する一方で、今オフに獲得を目指すメジャー球団が、最重要視するのは大谷のコンディション。寒い春先に無理をして故障が悪化するような事態は絶対に避けてほしい、というのが本音なのです。実際、ある球団のスカウトは「彼がすばらしい才能を持っていることは、もはや誰もが分かっている。100%の状態でないのであれば、出場しないことは理にかなっている」と、欠場をマイナスにはとらえていません。さらに「シーズン終盤にどんな状態になっているかを見守っていきたい」と、中長期的な視線で大谷を見つめています。

 大谷はすでに「日本の宝」と言われていますが、今やメジャー関係者の中でも特別な存在です。メジャー移籍後、将来的に「世界の宝」となるためにも、今回の決断を尊重しつつ、1日も早い完全回復を願いたいものです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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マ軍マルチネスの「11」が永久欠番 次は「51」か

エドガー・マルティネス(写真は03年5月29日)

 マリナーズの主砲として活躍したエドガー・マルチネスの背番号「11」が、マ軍の永久欠番となることが発表されました。マルチネスといえば、1987年のメジャーデビュー以来以来、マ軍ひと筋18年間、主に指名打者としてプレー。通算打率3割1分2厘、309本塁打、1261打点と、抜群の勝負強さでファンからの信頼と人気を集めました。2000年に佐々木主浩、翌01年にイチローが加入した当時、不動の4番としてプレーオフ進出の原動力となったこともあり、日本のファンにもなじみ深い選手として知られるようになりました。

 今年、創設40周年を迎えるマ軍にとってマルチネスの「11」は、ケン・グリフィー・ジュニア.の「24」に次いで2つ目の永久欠番となります(ジャッキー・ロビンソンの「42」は全球団)。盟主ヤンキースに1桁台の空き番号がなく、計23人、21種類(「8」「42」は2人ずつ)もの永久欠番が存在することから比べると、歴史の違いがハッキリしてしまいますが、マ軍ファンにとって「11」は、やはり特別な番号でした。

 今後のマ軍で、近い将来、次の永久欠番になりそうなのが、「51」です。というのも、マ軍ファンにすれば、ある意味で「24」「11」以上に、長年にわたって目にしてきた数字が「51」でした。1989年途中から9年半にわたって「ビッグ・ユニット」こと左腕ランディ・ジョンソンが背負い、2001年から10年半はイチローの代名詞として広く認知されてきました。

 2015年に野球殿堂入りしたジョンソンの場合、02年の世界一に貢献したダイヤモンドバックスでひと足早く永久欠番となりましたが、マ軍も検討していると言われています。今季もイチローは現役としてプレーしますが、将来的に引退した後、ジョンソンと2人そろって「51」を永久欠番にすると見られています。

 グリフィーの「24」、マルチネスの「11」、そしてジョンソン、イチローの「51」。

 この3つの背番号は、今もなおシアトルのファンの脳裏に、深く刻み込まれているはずです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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川崎宗則、36歳マイナー生活の覚悟

今月、日本でのトークショーに出演した川崎宗則

 カブスからFA(フリーエージェント)になっていた川崎宗則選手が、今季もカ軍に残留することが決まりました。米移籍6年目を迎えますが、マイナー契約からスタートする貪欲な姿勢は、36歳となる今季も変わっていません。

 結果的に、過去5年間と同じ立場なのですが、その厳しさは周囲が考えるほど生半可なものではありません。メジャーとマイナーを行き来するだけでも大変ですが、なおかつ結果を求められます。たとえ結果を残しても、球団側がプロテクトしたい若い選手の契約を優先させる場合は、非情の通告を受けることも頻繁です。そんな環境を承知したうえで、カ軍残留を決断したのですから、川崎の覚悟は相当なものです。

 昨季の川崎は開幕直後に緊急昇格したものの、すぐにマイナー行きを通告されるなど、3Aアイオワでの生活が大半を占めました。メジャーでは、13試合に出場し、21打数7安打(打率3割3分3厘)と、公式戦での出場機会は限られました。それでも、ポストシーズンではロースターから外れながらも緊急時の交代要員として最後まてチームに同行し、世界一の美酒を浴びました。持ち前の明るさでチームに溶け込んだだけでなく、練習に取り組む姿勢など、若い選手の「手本」として高く評価されていた証しが、チャンピオンリングでした。

 その一方で、シャンパンファイトの際には、今後の去就について「また(マイナー生活で)5時間のバス移動をできるか…」と、本音もこぼしていました。常に前向きな川崎といえども、先の見えないマイナー生活期間中には、さすがにヘコんだ時期があったそうで、日本球界復帰が脳裏をちらつくことも、1度や2度ではなかったようです。

 契約内容は、昨季と同様にメジャーに昇格すると年俸90万ドル(約1億500万円)となるスプリット契約と見られており、日本復帰の方が好条件だったはずです。それでも、世界一の感激を味わった川崎は、連覇を目指して、今季も米国にプレーの場を求める覚悟を決めました。

 今季のカ軍にはレッドソックスから移籍した上原もいます。2人とも闘志を前面に出すムードメーカー。カ軍の試合後、川崎と上原の2人が交わすハイタッチは、かなり激しいものになるような気がします。

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トランプ氏の政策に注目 野球界に与える影響とは

マーリンズ・イチロー

 新年が明けた米国では、1月20日に大統領に就任するドナルド・トランプ氏の政策に注目が集まっています。経済、外交などさまざまな政策の行方は現時点で不透明ですが、同氏の言動は、野球界にも影響を与える可能性があるとの意見も聞こえています。

 特に、注視されているのが、現在約1200万人とも言われる不法移民の問題です。すでに同氏は選挙期間中から不法移民(特にメキシコ)の追放を公約に掲げたこともあり、一部のラテン系選手から反発を受けました。さらに、同氏は国交が回復したキューバとの関係も見直す方針を持っていると言われています。

 言うまでもなく、メジャーでは多くの「外国人」がプレーしています。彼らは正式なビザやグリーンカード(永住権)を取得して各球団に所属しており、法律上、まったく問題はありません。その一方で、彼らの親族や知人に不法移民が含まれている可能性も否定できません。これまで亡命以外に移住の手段がなかったキューバ人選手にすれば、ようやく国交正常化への動きが進展し始めた直後に方針転換されるとすれば、死活問題にも直結しかねません。

 これまで野球界はホワイトハウスとの間で、良好かつ緊密な関係を築いてきました。第43代大統領のジョージ・W・ブッシュ氏は、かつてレンジャーズの共同オーナーを務めたこともあるほどで、大の野球ファンとして有名でした。今回退任するバラク・オバマ氏はホワイトソックスのファンとして知られ、始球式を行った2009年のオールスター(セントルイス)ではイチローとも対面。昨春、キューバを訪問した際には、球場で試合観戦し、両国の関係修復を世界中に示しました。また12月28日、ハワイ・真珠湾で行われた日米首脳会談後のスピーチでは、日米両国の平和と友情の一例として「マイアミのスタジアムを沸かせているイチローのような野球選手もいる」とスピーチするなど、野球界とのつながりを大切にしてきました。

 現段階で、トランプ氏の政策が、野球界にどのような影響を与えるかは不明です。ただ、移民対策の一環として、ビザ発給や永住権取得が制限されるようになるとすれば、現在約27%(2016年開幕時)を占めるメジャーの外国人選手、さらには今後メジャー挑戦を目指す選手にとって障壁になる可能性も捨てきれません。コミッショナーのロブ・マンフレッド氏は「今後数年間は心配していない」と話していますが、過激で流動的な発言で知られるトランプ氏だけに、その言動からは、野球関係者にとっても目が離せないことになりそうです。

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独断と偏見で選んだ日本人メジャー「5大ニュース」

8月、メジャー通算3000安打を達成したイチローは歓声に応える

 2016年も残すところわずかとなりました。今シーズンも、メジャーではいろいろな出来事がありました。そこで、日本人メジャーにまつわる「5大ニュース」(5位は2つ)を、完全な独断と偏見で選んでみました。

 <1>イチロー、ピート・ローズ超えの日米通算4257安打&メジャー通算3000本安打達成

 <2>カブス108年ぶり世界一、ムネリンも美酒

 <3>マエケン、メジャーデビュー&16勝

 <4>ダルビッシュ、トミー・ジョン手術から復活

 <5>マー君、投球回数200イニングに1/3及ばずも、自己最多の14勝

 <5>岩隈、200イニングに1回及ばずも、年間ローテを守り16勝

 今年は、リオデジャネイロ五輪が開催されたこともあり、日本ではメジャーの話題が「縮小」された感がありましたが、だからといって各選手の姿勢やパフォーマンスが変わったわけではありません。

 とりわけメジャー最年長野手となる42歳でプレーしたイチローは、昨季の低迷からキッチリと立て直しました。打席数が73減少したにもかかわらず、安打数91→95、打率2割2分9厘→2割9分1厘、出塁率2割8分2厘→3割5分4厘。出場機会が一定しない立場ながら、常にトップクラスのプレーぶりを披露し続けました。節目の大記録を達成したことはもちろんですが、イチロー本人が口にする「50歳まで現役」の可能性を感じさせるシーズンとなりました。

 来年は、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)も開催されますし、カブス上原、アストロズ青木、マーリンズ田沢と、新天地で再出発する選手もいます。さらに、オフには日本ハム大谷のメジャー挑戦が実現する可能性もあるだけに、各球団の動きが活発になり、米国ファンからの注目度も一気に高まるはずです。

 ちょうど1年後の2017年12月。メジャーの「5大ニュース」「10大ニュース」に、どんな話題がランクインするのか、今から楽しみは尽きません。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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潔かった黒田引退、対照的なメジャーの「惜別行脚」

14年、ヤンキース時代の黒田とジーター

 男の引き際は、どうあるべきなのでしょうか-。

 日本シリーズ開幕を目前に控えた10月18日、広島黒田博樹投手(41)が、今季限りでの現役引退を発表しました。大勝負を控えた状況でもあり、黒田自身は「すべて終わってから、みんなに伝えよう」と考えていたものの、親交の深い同僚の新井から「最後の勇姿をファンに見てもらった方がいいんじゃないですか」との助言を受けて決断。決戦前の引退発表となったわけです。「すべてが終わってから」という黒田の思いの裏には、メジャーで実感した「引き際」の在り方への疑問があったのではないでしょうか。

 メジャーでは10月10日、レッドソックスの主砲デービッド・オルティス内野手(41)が、現役最後の試合を終えました。ア・リーグ地区シリーズで敗れ、現役生活にピリオドを打ちました。昨年11月、今季限りでの引退を発表したものの、公式戦では打率3割1分5厘、38本塁打、127打点とMVP級の活躍を見せ、レ軍は地区優勝。結果的にポストシーズンは勝ち抜けなかったものの、年間を通した全米中の「惜別行脚」は、ファンのためのみならず、興行的にも大成功を収めました。

 引退の「事前告知」の先駆けとなったのは、2632試合連続出場の大記録を打ち立て、01年限りで引退した鉄人カル・リプケン(オリオールズ)でしょう。リプケンは成績低下をよそに、ペナント争いとは無縁の消化試合でも各地で「引退興行」に駆り出されました。その裏に、破格の集客力を残したビジネス的な観点があることは言うまでもありません。

 13年3月の春季キャンプ中には、ヤンキースのクローザー、マリアーノ・リベラ投手がシーズン後の現役引退を発表しました。予定された引退を1年延長した背景があったとはいえ、長く、厳しい闘いを前にしたチーム内に、「今季限り宣言」に対して、ある種の違和感が残ったのも事実でした。翌14年2月には、ヤ軍の主将デレク・ジーター遊撃手が、シーズン終了後の引退を発表。当時、ヤ軍に在籍した黒田は、他の同僚と一緒に2人の会見を静かに見守っていました。

 現役最終年が全米中に告知されたリベラ、ジーターは、ともにオールスターに選出されたほか、遠征先の各地では、オリジナル記念品が贈呈されるなど、惜別セレモニーが行われました。全国区の人気を持つスーパースターの最後の勇姿をひと目見ようと、多くのファンが「引退興行」に足を運んだわけです。

 確かに、引き際は難しく、おそらく「正解」はないでしょう。ただ、日本の場合、シーズン前の「事前告知」が素直に受け入れられるでしょうか。

 常に「次が最後の登板」と言い続けてきた黒田の潔い幕の引き方が、日本全国のファンの心に深く刻まれたことだけは間違いありません。

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ただの会議じゃない「ウインターミーティング」

14年のウインターミーティングで会見する敏腕代理人のボラス氏

 米球界でオフシーズンの恒例行事でもある「ウインターミーティング」が、12月5日(日本時間6日)からスタートしました。「ミーティング」という英語を日本語に訳すと「会議」となってしまうため、何かと、机を挟んだ肩苦しい「大会議」のような印象を与えてしまいますが、実際にはかなり異なります。

 このウインターミーティングには、実にさまざまな野球関係者が集まります。コミッショナーをはじめ機構側のトップ、各球団の首脳陣、監督らが一同に介するのは当然ですが、それ以外にも代理人だけでなく、野球ビジネスに携わる数千人が、それぞれの思惑を持って会場に詰め掛けます。

 毎年、会場となるのは、巨大なリゾート系のホテル、またはコンベンションセンターを持つ施設です。というのも、国連のように全員が集い、議論を交わすような会議場ではなく、各球団はそれぞれ広いスイートルームを拠点に、他球団とのトレードや代理人との交渉を進めていきます。つまり、会場としては一同に介していながら、それらの動向は「公」にされることもなく、水面下で静かに進行します。多忙な球団のGMとなると、食事もほぼルームサービスのみ。ホテルのフロントでのチェックイン、チェックアウト以外は姿を見かけないほど、極めて多忙な日々を過ごすと言われています。

 その一方で、野球界で就職を求める人材のための「ジョブ・フェアー」や「ワークショップ」、野球に関する商品を展示、販売する「トレード・ショー」など、グラウンド以外でのビジネスフォーラムも、随時開催されています。スーツ姿の「就活生」もいれば、ラフなスタイルの代理人、新外国人をリサーチする日本球団関係者、さらに情報収集に躍起となる報道陣など…。実に、多様な人種、職種の人間が、会場中に散らばっているのが、ウインターミーティングです。

 ただ、期間中には、大物のFA移籍や大型トレードが成立するのが、ここ数年の恒例になっています。クリスマスをはじめ、年末年始のホリデーシーズンまでに、ある程度の「仕事納め」をしておきたいのは、米球界内でも同じこと。このミーティングを境に、一気に市場が動くのではないでしょうか。

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米国で拡大WBC熱 本気メジャー軍団実現するかも

13年大会の米国代表

 ヤンキースの快速リリーバー、デリン・ベタンセス投手が、来春のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でドミニカ共和国の代表としてプレーする意志を明かしました。米メディアによると、ニューヨーク生まれのベタンセスは、米国からも打診があったようですが、自らのルーツとも言える両親の祖国を選んだようです。

 次回で4回目の開催となるWBCへの注目度は、米国内でも着実に変わってきています。過去3回の大会前は、メディアで代表候補の話題が取り上げられることはほとんどなかったのですが、今回は早い時期から各選手への「意思確認」が報じられるようになりました。というのも、今回ばかりは米国も本腰を入れないわけにはいきません。過去3大会はホスト国にもかかわらず、優勝を逃してきただけでなく、最高成績は準決勝止まり。大会の権威と盛り上がりを、最も阻害してきた負い目があるようにも映ります。

 米国代表を率いるのは、1997年にマーリンズを世界一に導いた名将ジム・リーランド監督。最優秀監督賞3回の実績を持つ「オールド・スクール・タイプ」の熱血漢です。戦術、戦略面だけでなく、人望の厚い人格者としても知られています。

 現段階で米国代表のロースターは予想の範囲内ですが、すでに今季のサイ・ヤング賞マックス・シャーザー投手(ナショナルズ)、快速右腕クリス・アーチャー投手(レイズ)のほか、2年連続2冠のノーラン・アレナド内野手(ロッキーズ)、15年MVPのジョシュ・ドナルドソン内野手らの出場が確実視されています。さらに、今季MVPのクリス・ブライアント内野手(カブス)、サイ・ヤング賞3回の左腕クレイトン・カーショー投手らそうそうたる実力者の名前も挙がっています。

 米国だけでなく、前回覇者のドミニカ共和国、準優勝のプエルトリコ、ベネズエラもメジャーのトップクラスをそろえる見込みで、過去3大会以上に激しい戦いが予想されます。かつてドミニカ共和国代表の主軸として活躍したカルロス・ペーニャ氏(現野球解説者)は、「WBCは自国の誇りをかけた戦い。将来はサッカーのワールドカップにようになってほしい」と話しています。

 そのためにも、やはり米国の躍進が欠かせません。世界一奪還を目指す日本にとって、「眠れるライオン」は眠ったままの方がいいのかもしれませんが、スター選手が並ぶ米国代表との「ガチンコ勝負」を見たいファンも、きっと多いのではないでしょうか。

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マエケン新人王をしのぐほど特別な「賞」に値

ドジャース前田健太

 2016年のメジャーリーグ新人王が14日(日本時間15日)、発表され、ナ・リーグがコリー・シーガー遊撃手(22=ドジャース)、ア・リーグはマイケル・フルマー投手(23=タイガース)が選ばれました。ドジャース前田健太投手(28)は、残念ながら受賞を逃しましたが、その評価は両リーグの受賞者2人に遜色のないものでした。

 とりわけ今季のナ・リーグの新人王争いは、例年になく、ハイレベルでした。最終候補3人の成績を並べてみても、簡単には判断できないほど、各選手の差はさほどなかったような気がします。

 ◆コリー・シーガー 157試合出場、打率3割8厘、193安打、26本塁打、72打点。

 ◆トレー・ターナー(ナショナルズ) 73試合、打率3割4分2厘、13本塁打、33盗塁。

 ◆前田健太 32試合先発、16勝11敗、投球回数175回2/3、防御率3・48。

 BBWAA(全米野球記者協会)が選出する各賞については、新人王だけでなく、最優秀監督、MVPなど、それぞれについて特定の基準が設定されているわけではありません。その一方で、短期間の成績だけではなく、年間を通していかにチームの勝利に貢献したか、に重きを置く傾向もあります。その意味では、今回の新人王の場合、出場機会の少ないターナーではなく、実質的にはシーガーと前田の一騎打ちだったと言っていいでしょう。

 もっとも、今季の場合、シーガーの成績、貢献度、印象度が抜きんでていたことは否定できません。内野手の中でも負担の多い遊撃手としてほぼフル出場し、ドジャースの中軸として残した数字は、過去数年来の新人としては傑出しています。前田にしても「新人」の領域を度外視しても文句なしの成績ですが、ひいき目を抜きにしても、シーガーのインパクトには少しばかり及ばない印象が残ってしまうのも事実です。

 日本人メジャーでは、過去に野茂、佐々木、イチローが新人王を獲得していますが、日本での「プロ経験」の詳細が知られれば知られるほど「足かせ」になっているのも事実です。だからといって、前田が残した成績が色あせるものでもありません。メジャー特有の滑るボールや固いマウンドだけでなく、文化の違いにも対応しつつ、なお結果を残すことは決して簡単ではありません。それほど、「新人」「1年目」は、特別なシーズンと言っていいでしょう。

 結果を残して当然と言われた中での16勝。公式タイトルこそ逃しましたが、前田の並外れた順応力は、新人王をしのぐほど、特別な「賞」に値するような気がします。

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Wシリーズを戦い終えた両監督の言葉に垣間見る強さ

カブスのマドン監督(左)とインディアンスのフランコナ監督

 2016年のメジャーリーグは、カブスが108年ぶりの世界一に輝き、幕を閉じました。好勝負続きだったワールドシリーズは、第7戦までもつれ込み、最後は延長戦の末、決着が付く激闘でした。歓喜に沸くカブスナインをよそに、涙をのんだインディアンスのベンチには、ぼうぜんとした表情の選手が並んでいました。

 その一方で、試合後の会見に臨んだインディアンスのテリー・フランコナ監督(57)は、記者団からの質問を受ける前に、自ら口を開きました。

 「まず、シカゴ・カブス、ジョー・マドン(監督)、セオ(エプスタイン=社長)、ジェド(ホイヤー=GM)、Mr.リケット(オーナー)、そして組織全体を祝福したい。彼らは多くの祝福を受けるにふさわしいと思う」。

 頂点まであと1歩のところまでたどり着きながら敗れた無念さは、想像にあまりあります。悔いもあれば、グチをこぼしたくなっても不思議ではありません。それでも、真っ先に勝者をたたえる姿勢は、「ゲームセット」というよりも、ラグビーの「ノーサイド」の精神に近いものでした。

 一方、勝ったカブスのジョー・マドン監督(62)も、開口一番、敗れたインディアンスの健闘を祝福し、さらに続けました。

 「勝つことが難しいシリーズだった。ただ、我々の野球界が前へ進むために、この戦いがいいことになると信じたい。我々は単にプレーするだけでなく、若いファンの心をつかみたいと思ってやっている。もちろん、勝ったから言うわけではない。ただ、それが本音なんだ」。

 メジャーには30人の現役監督がいますが、昨年、ある米メディアが行った選手アンケートによると、フランコナ、マドンの両監督は「一緒に戦いたい監督」のトップ3にランクされていました。ゲームメーク、選手起用など戦術面の秀逸さはもちろんでしょうが、この2人に共通するのは、選手やスタッフとのコミュニケーション能力にたけているところと言われます。試合の指揮を執るだけでなく、人格者として尊敬され、愛されているからこそ、両チームの結束は固かったのでしょう。

 自軍の選手やスタッフをリスペクトし、相手をリスペクトし、さらに球界全体の発展を願う姿勢-。

 すべての戦いを終えた両監督の言葉を聞くと、ワールドシリーズの大舞台に立てた、本当の理由が見えたような気がします。

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世界一に挑むカブス「108」にまつわる不思議な縁

ナ・リーグ優勝決定シリーズを制しワールドシリーズ出場を決めたカブス

 「108」。

 この数字は、仏教の世界では、除夜の鐘と同様に煩悩の数と言われますが、野球界で何らかの深い意味があるのでしょうか。

 メジャーのワールドシリーズ(WS)が「カブス-インディアンス」の顔合わせで、25日(日本時間26日)からスタートします。インディアンスにとっては1948年以来、カブスにとっては1908年以来の世界一をかけた、「古豪」同士の戦いとなりました。

 ひとくちに数十年ぶりと言っても、正直なところ、ピンとは来ませんが、その歳月は途方もなく長いものです。特に、カブスの場合、最後にWSに進出したのは、太平洋戦争が終結した1945年でした。2勝1敗とリードして迎えた第4戦。熱狂的なファンが、ペットのやぎ「マーフィー」と一緒にリグリーフィールドを訪れたところ、入場を拒否され、やむなく断念。そこから3連敗で敗退し、それ以降、WSに手が届かなかったこともあり、「ヤギの呪い」「マーフィーの呪い」の逸話が、広く知られるようになりました。もっとも、今季は公式戦でメジャー最多の103勝を挙げるなど圧倒的な実力で、71年ぶりにナ・リーグを制覇。ひとまず「呪い」を解いて、世界一への挑戦権を得たわけです。

 前回、カブスが世界一となった1908年は日本の元号でいえば明治41年。メジャーでは、「球聖」タイ・カッブ(タイガース)が打率、打点の2冠を獲得し、第1回日米野球が開催された年でした。この年、野球ルールが改正され、犠牲フライが得点として認められるようになるなど、野球界としてはまさに「黎明(れいめい)期」。今現在、108歳を超えて存命している方でも、カブスの優勝は記憶に残っていないのではないでしょうか。

 昨季からカブスを指揮する知将マドン監督は、過去の経緯を踏まえたうえで、口調を強めて言いました。

 「我々は、過去に何が起こったか、何が起こらなかったのか、その歴史には心から敬意を払っている。ただ、彼らは若い。それぞれの瞬間を誠実に過ごしてほしいと期待している」。

 -というわけで、まったくをもって、完全なこじつけですが…

 現在、日米とも公式球の縫い目は、「108」で定着しています。その縫い目が、それまでの「116」から「108」に制定されたのは、これまた偶然にも、インディアンスが最後に優勝した68年前の1948年でした。

 今回のWSでカブスが世界一になれば、実に「108」年ぶりということになります。1球のボールの縫い目がひと回りするほど、長く待ち焦がれたカブスファンにとって、「108」年の年月は、シャレっ気あふれる、野球の神様のイタズラなのかもしれません。

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MLBプレーオフで重要な「ホームアドバンテージ」

インディアンスのホーム、プログレッシブ・フィールド(AP)

 日本プロ野球と同様に、メジャーでもポストシーズンの白熱した試合が続いています。ナ・リーグ地区シリーズ第5戦では、2勝2敗で敵地に乗り込んだドジャースが4時間32分の激闘の末、ナショナルズを振り切り、リーグ優勝決定シリーズ進出を決めました。

 最終的な結果はともかく、メジャーではプレーオフのカギを握る要素のひとつとして、ホームアドバンテージ(本拠地開幕権)を重要視する意識が定着しています。スタジアム全体がご当地のチームカラーに染まり、1球の判定、けん制球1球、敵の捕手がマウンドに向かうだけで大ブーイングが飛び交うなど、まさに「地元一色」の雰囲気に包まれます。

 5試合制の地区シリーズは「2(ホーム)-2(ビジター)-1(ホーム)」、7試合制のリーグ優勝決定シリーズ、ワールドシリーズは「2-3-2」のフォーマットで行われます。数字上は、わずか1試合の「差」ですが、この1試合がシリーズの行方を左右することも多いため、各チームはペナントレースの最後まで真剣な戦いを続けるというわけです。

 その一方で、短期決戦の期間中に広大な大陸間を移動するわけですから、選手にとってかなりの負担になるのも事実です。実際、「ナショナルズ-ドジャース」の第2戦は雨天中止となったため、翌日の移動日に順延。両チームは試合後の深夜、東海岸のワシントンから時差3時間の西海岸のロサンゼルスへ舞台を移し、デーゲームで第3戦を戦いました。どの選手も睡眠時間はわずかのはずでしたが、不平不満の声は聞こえてきません。それがプレーオフでは当然のことだからなのでしょう。

 日本のCSの場合、すべて上位チームの地元で開催されています。3試合制のファーストステージはともかく、全6試合を同じ場所で行うファイナルステージには、どうしても違和感を覚えてしまいます。リーグ覇者に敬意を払う姿勢は理解できますが、1勝のアドバンテージで十分という意見はないのでしょうか。今年の場合、ソフトバンク、DeNAのファンは地元で応援できないわけですが、もしメジャーで同様のシステムになるとすれば、間違いなくファンの抗議運動が起こるはずです。

 確かに、運営側の事情も、球界内のコンセンサスも重要でしょうが、本当にファンが喜び、底辺を拡大するためには何が必要なのでしょうか。日米両国で盛り上がるポストシーズンを機に、あらためて両国間の違いが見えたような気がします。

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来季につながるプラード「セレモニー監督」

 公式戦最終戦となった10月2日、「マーリンズ-ナショナルズ戦」で、マ軍のマーティン・プラード内野手がチームの指揮を執りました。マ軍のプレーオフ進出の可能性が消滅し、対するナ軍はすでに地区優勝が決定。いわゆる「消化試合」となったこともあり、マ軍マッティングリー監督が、「セレモニー監督」としてプラードを指名し、同選手も快諾したことで実現しました。

 現役選手が「監督」を務めることは、過去にもありました。ヤンキースのジョー・トーリ監督(当時)は1999年の最終戦でポール・オニール、04年にはルーベン・シエラを監督に指名。ベテラン選手に指揮を任せることで、「消化試合」にシャレっ気をもたらす演出をしました。今回の起用の裏には、ホセ・フェルナンデス投手の急死で沈むチームの雰囲気を和らげたい、との願いも込められていたのでしょう。マッティングリー監督は「ナイスで小さい伝統。これが(ポストシーズンの)当落線上の試合だったらできない。我々は(球場を出て)フットボールを見に行くわけでもないし、最後までベンチにはいるから」と、久しぶりにリラックスした表情で話していました。

 この日、試合前のメンバー表交換には、オズーナ外野手が登場。ベテラン捕手のマシスがベンチコーチ、クリス・ジョンソンが打撃コーチの役割を担いました。「3番三塁」でスタメン出場したプラードは第2打席を終えると、3回裏から指揮に専念。ベンチ最前列で腕組みしながら戦況を見守り、投手交代の際にはゆっくりとマウンドへ向かうなど、なかなか堂に入った雰囲気を見せていました。試合は、マ軍の追い上げも及ばず、監督初白星は逃しました。それでも、投手7人、野手13人を起用するなど、積極的に采配を振りました。

 試合後のプラードは、いつになく疲れた表情? で試合を振り返りました。昨季最終戦でイチローが登板したことを思い起こしたのか開口一番、「今日はイチに(投手として)投げさせたくなかったんだよ」というジョークでした。「初回から(審判への抗議で)退場させられるような監督にはなりたくない」と話していた一方で、3時間あまりの「監督業」で、選手とは違う角度から試合を見る新鮮さを感じたようでした。

 「すばらしい経験だった。ただ、やることが多すぎて…。僕は監督になれないと思ったよ」。マーリンズの主将格で、実力、人格とも尊敬される32歳のベテラン。来季以降も、まだまだ現役のチームリーダーとして活躍しそうです。

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マッティングリー監督の長い旅に終わりは来るのか

 メジャーの公式戦も佳境を迎え、プレーオフ争いも最終段階に入っています。言うまでもなく、どのチームもワールドシリーズ(WS)制覇を最終目標にしているわけですが、メジャー30球団の頂点に立つまでの道のりは、周囲が考える以上に険しいものです。

 イチローが所属するマーリンズは、夏場までワイルドカード争いで好位置につけていましたが、8月下旬から11戦10敗と大失速。154試合目(9月23日終了時)で借金「2」と、プレーオフ進出は絶望的な状況になりました。

 とりわけガッカリしているのは、就任1年目のドン・マッティングリー監督です。同監督といえば、現役時代、ヤンキースひと筋でプレーし、主将としてリーダーシップを発揮。MVP1回、オールスター6回、ゴールドグラブ9回を獲得した実績を持つスター選手でした。ところが、不思議なことに、これまで1度もWSの出場経験がないのです。

 1982年にメジャーデビューし、95年に現役を引退するまでの14年間はヤンキースの暗黒時代で、WSどころか、地区優勝もなく、プレーオフにも進出していません。04年以降、ヤンキース、ドジャースのコーチを務めた7年間、さらに監督(昨季までドジャースで5年間)としても、通算6年目で依然としてWSの舞台を踏んでいません。

 その一方で、マッティングリーと入れ替わるようにデビューしたデレク・ジーターは96年以降、WSに7回出場し、14年の引退までに5個のチャンピオンリングを手にしました。日本人では田口壮(カージナルス、フィリーズ)の2個をはじめ、井口資仁(ホワイトソックス)、松坂大輔(レッドソックス)ら多数の選手が世界一リングを手にしていますが、彼らは限られた存在。メジャー全体からすれば、リングどころか、WS未出場の選手の方が断然多いのです。

 今季も夢破れそうなマッティングリー監督は、しみじみと言っています。

 「ワールドシリーズは、野球界のだれにとっても明確なゴール。今は長い旅の途中なんだ」

 最多本塁打記録を持つマーリンズのバリー・ボンズ打撃コーチにしても、ジャイアンツ時代の02年、WSにコマを進めましたが、第7戦で敗戦。リングには届きませんでした。日米通算でピート・ローズの記録を抜き、メジャー通算3000本安打を達成したイチローも、リーグ優勝決定シリーズ止まりで、WSには出場していません。

 来季の布陣は決まっていませんが、マッティングリー、ボンズ、イチローの「名選手」が、一緒にWSへ出場し、さらに世界一リングを手にする日は来るのでしょうか。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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メジャーでも強豪軍団に黒田&新井的ベテランの存在

レンジャーズ・ルイス(左)と話すダルビッシュ

 日本プロ野球で25年ぶりの優勝を飾った広島で、今季は黒田、新井の両ベテランの存在が大きくクローズアップされました。昨季までのエース前田がメジャーへ移籍。開幕前の戦力ダウンを心配する声をよそに、若手とベテランの力がかみ合い、快進撃を続けて頂点に立ちました。

 メジャーでも、ペナント争い、さらにプレーオフを勝ち抜くチームには必ずと言っていいほど、チームをまとめるベテランが必要、と言われます。

 たとえば、1995年から13年連続でプレーオフに進出し、その間、世界一5回に輝いたヤンキースでは、「コア4(核の4人)」と呼ばれるリーダーが広く知られていました。野手のデレク・ジーターだけでなく、捕手ホルヘ・ポサダ、先発左腕アンディ・ペティット、抑えのマリアーノ・リベラと、各ポジションに生え抜きの実力者がいたことで、チームの統率が取れていました。

 特にメジャーの場合、米国だけでなく、中南米、アジアなど世界各国から選手が集まる「多国籍軍」です。国籍だけでなく、人種や言葉、文化の違う選手が、同じチームとして長丁場の162試合を戦うわけです。その間、当然のように認識のズレもあれば、好き嫌いもあります。時には、言い争いから大げんかに発展することも珍しくなく、チームが一体となることは、日本以上に簡単ではありません。

 とりわけシビれる試合が続く後半戦になると、チーム全体の雰囲気は重要になります。

 勝っても浮かれず、負けてもうつむかず-。

 そういう安定した土壌を築くためには、実績に加え、人格的にもチーム全員から尊敬されるリーダーの存在が重要になるというわけです。もちろん、単なる「お目付け役」というだけでなく、チームを盛り上げたり、引き締めたりと、リーダーの在り方もさまざまです。

 そういう意味で、現在、メジャー最高勝率を維持するカブスは、野手には二塁手ベン・ゾブリスト、先発投手のジョン・ラッキー、ジョン・レスターと、ベテランのリーダーと若手のバランスが取れています。ア・リーグトップのレンジャーズにしても、「兄貴」的な存在の三塁手エイドリアン・ベルトレ、投手にはコルビー・ルイス(元広島)、コール・ハメルズと、核となるベテラン選手がそろっています。

 だからといって、プレーオフを勝ち抜けるかどうかは別問題です。ただ、この両チームが、順当に白星を重ねているのは、決して偶然ではないような気がします。

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WBCでイチローらMLB日本人選手は重要な存在

 来年2017年に予定されるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本代表・小久保裕紀監督(45)が8月中旬、日本人メジャーリーガーが所属する各球団を訪問しました。国民の期待を背負う「侍ジャパン」の陣頭指揮を執る立場として、マーリンズ・イチロー外野手をはじめ、日本人選手の激励を兼ねた視察を目的とするものでした。今回の訪問が代表への招請や打診と直接関係するわけではありませんが、小久保監督は「メジャーでやってる選手たちは、こっちに足を運ばない限りは直接は会えないので」と、含みを持たせた言葉を残しています。

 2006年の第1回大会には、イチローと大塚晶則(当時レンジャーズ)の2選手、2009年の第2回大会には、イチロー、城島健司(ともに当時マリナーズ)、岩村明憲(レイズ)、福留孝介(カブス)、松坂大輔(レッドソックス)の5選手が、「メジャー組」から参加しました。

 各メジャーリーガーが戦力上、重要な役割を期待されることは言うまでもありません。他国のメジャー選手の情報にしても、対戦経験に基づいたものですから、ビデオやデータ以上に説得力もあるはずです。その一方で、米国本土で戦う上で「まとめ役」を担ってきた部分も見逃せません。

 実際、過去の大会では、イチロー主催の焼き肉集会が行われて話題を集めました。このほか、各メジャーリーガーが各地のレストランを手配したり、休日にはゴルフを楽しむなど、グラウンド外でも積極的にコミュニケーションを図っていました。メジャーでは、シーズン中でも休日のゴルフは日常茶飯事。WBCの大会中だからといって、宿舎内におとなしく閉じこもるよりも、青空の下で体を動かす方が、よっぽどいい気分転換にもなります。そんな自由でおおらかな雰囲気を生み出したのは、間違いなく、メジャーリーガーの面々でした。

 現時点で、来年の大会に何人のメジャーリーガーがエントリーするかどうかは未定です。故障明けの選手をはじめ、FAとなる選手は移籍問題が絡むなど、個人の意思だけでは決められず、確かに難しい部分はあります。

 ただ、メジャーリーガーが中心となった06、09年で2連覇したのは、偶然でないような気もします。プレッシャーのかかる試合の連続だけに、場数を踏んだベテランや経験者の存在が、より重要になるのではないでしょうか。

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米国人でも故障者続出…「中4日」見直しの時期では

 ドジャース前田健太投手が、23日(日本時間24日)のジャイアンツ戦で根気強い投球を披露し、今季13勝目(7敗)を挙げました。今年1月に契約した際、右肘に「アブノーマル」な部分が見つかり、地元米国メディアは、シーズンを通して投げられるか、不安視する論調で報じてきました。それでも、現時点で前田はローテーションを飛ばすことなく25試合に先発。勝利数、イニング数など主要部門でチームトップの成績を残しています。

 その一方で、ドジャースは同日、左腕カズミアーの故障者リスト(DL)入りを発表。これで今季27人目のDL入りとなり、ESPNなどによると、過去30年間で2012年のレッドソックスと並ぶ「史上最多」となりました。今季のドジャースは開幕の時点でDL入り選手が10人。23日の時点では15人が故障で離脱しています。しかも、エース左腕のカーショーをはじめ、マッカーシー、柳、ウッドら先発投手だけで7人。開幕ローテで3番手だった前田は、1番手としてライバル球団のエースと投げ合う状況になっています。

 それでも、6月26日の時点で最大8ゲーム差まで広がっていたジャイアンツを逆転し、ナ・リーグ西地区の首位を奪還。ここまでは層の厚さと的確な補強で、故障者の穴を埋めてきました。前田だけでなく、マリナーズ岩隈久志、ヤンキース田中将大も、他の投手陣が脱落する中、開幕からローテーションを守り続け、クオリティーの高い投球を続けています。

 かつて、日本人投手に故障が相次いだ際、米国内では「中4日に順応できない日本人」のイメージが浸透した時期がありました。ところが、近年はストラスバーグ(ナショナルズ)、ハービー(メッツ)ら若き剛腕投手らに大きな故障が目立つようになり、メジャー球界全体の認識も、少しずつ変わってきました。複数のトレーナーは「鍛えるトレーニングも大事だが、シーズン中は休養と回復が最優先」と、プレー習慣などにかかわらず、回復度を重要視する傾向が高まっています。

 ドジャースの「故障渦」を見るまでもなく、一般的に、先発投手のケガには、過密日程と「中4日」が関連していると考えられています。近年は、各球団とも時折中5日、中6日をミックスするようになりましたが、それでも故障者増に歯止めはかかりません。

 日本人であろうと、米国人であろうと、過度の負担が続けば、故障することは変わりません。科学的なトレーニングが日々進歩する時代。そろそろ日程や登板間隔、さらにロースター拡大など、根本的な事項について、再検討する時期が近づいているのかもしれません。

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ひそかに達成された大記録、41年ぶり1試合7安打

 マーリンズのイチローがメジャー通算3000安打を達成した翌日の8月8日(9日)、フロリダ州マイアミで、ひそかに大記録が生まれました。敵地デンバーで3000安打を放ったイチローにとって、ちょど「凱旋(がいせん)試合」となった「マーリンズ-ジャイアンツ戦」。地元ファンの注目は、イチローの3001本目に集まっていたのですが、試合後、話題をさらったのは、「1試合7安打」を記録したジャイアンツのブランドン・クロフォード遊撃手でした。

 この試合で、クロフォードは第1打席の二塁内野安打を皮切りに、8回の第5打席までに4安打(第3打席は空振り三振)。ここまでならさほど珍しくありません。ところが、試合は終盤の点の取り合いで7-7のまま、延長戦に突入。クロフォードは第6、7、8打席でも安打を重ね、8打数7安打と、1975年以来、実に41年ぶり、史上6人目となる1試合7安打を記録しました。

 通算記録と1試合の記録の意味合いは異なりますが、3000安打が史上30人目で、1試合7安打以上は6人目。単純な「頻出回数」からすると、それだけ珍しい記録ということになります。

 参考までに、他の大記録の頻度は…(8月13日現在)。

 ◆サイクル安打 316回

 ◆ノーヒット・ノーラン(継投を含む) 295回

 ◆パーフェクト 23人

 ◆1試合4本塁打 16人

 昨季、自己最多の21本塁打をマークしたとはいえ、クロフォードといえば、昨季ゴールドグラブ賞を獲得するなど、これまでは名遊撃手として知られていました。過去、打率3割を超えたこともないだけに、誰よりもクロフォード自身が、驚きを隠せませんでした。「1試合で8打席に立つこと自体、めったにあることじゃないからね。7安打を打つなんてまったく想像もしなかったし、プレー中にそんなことは考えないものだよ」。延長14回表、この日7本目の安打が決勝タイムリー。5時間34分の長丁場にケリをつけた時点で、打率は2割6分5厘から2割7分8厘まで上昇していました。

 ヤンキース時代のイチローは、2012年9月19日にダブルヘッダー2試合に出場し、1日で8打数7安打をマークしましたが、1試合の最多は5安打(過去7回)。ちなみに、メジャーの1試合最多安打は1932年、ジョニー・バーネット(インディアンス)が延長18回でマークした9安打(11打数)ですが、ここまでくると、もはや「不滅」の領域でしょう。

 ただ、偶然かもしれませんが、クロフォード以前に1試合7安打した5選手は、いずれも3000安打には到達していません。ひと口に大記録といっても、通算記録と1試合の記録は、やはり頻出回数だけでは比較できないようです。

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マエケン10勝目も新人王争いでは2番手グループ

5回裏ロッキーズ2死、レメイヒューを遊ゴロに仕留め、雄たけびを上げる前田(撮影・河野匠)

 メジャー1年目のドジャース前田健太投手が、4日(日本時間5日)のロッキーズ戦で今季10勝目を挙げました。この時点で、ナ・リーグの新人投手では、勝利数(10)、先発数(22試合)、イニング数(125回2/3)、奪三振数(125)の各部門でトップの成績を残しています。ところが、新人王争いの話題になると、前田の名前は2番手グループにランキングされています。というのも、今季のナ・リーグは野手の「当たり年」。特に、守備の要となる遊撃手にスター候補生が並んでいます。

 最有力候補に挙げられているのが、前田の同僚でもあるコーリー・シーガー(ドジャース)です。4日時点で打率3割6厘(リーグ新人2位)、19本塁打(2位)、51打点(3位)、128安打(1位)、71得点(1位)と、全部門で好成績を残しており、オールスターにも選出されました。

 このほか、リーグトップタイの27本塁打のトレバー・ストーリー(ロッキーズ)、打率3割1分2厘のアレドミス・ディアス(カージナルス)と、強打の遊撃手3人が、ハイレベルな成績で1番手グルーブを形成しているのです。

 さらに、救援投手では、100マイルの快速球を武器に11セーブを挙げているカルロス・エステベス(ロッキーズ)、中継ぎからクローザーとなり、すでに55試合に登板している呉昇桓(カージナルス=前阪神)も8セーブ、防御率2・10と抜群の成績を残しています。

 ちなみに、過去、日本人メジャーで1年目に2ケタ勝利を挙げたのは、以下の6人なのですが…。

 1996年 野茂英雄(ドジャース) 13勝

 2002年 石井一久(ドジャース) 14勝

 2007年 松坂大輔(レッドソックス) 15勝

 2010年 高橋尚成(メッツ) 10勝

 2012年 ダルビッシュ有(レンジャーズ) 16勝

 2014年 田中将大(ヤンキース) 13勝

 この中で新人王に選出されたのは野茂だけで、00年佐々木主浩、01年イチロー(ともに当時マリナーズ)と計3人がタイトルを手にしました。その一方で、時代の推移とともに、高額契約で移籍する選手が増えたこともあり、日本人選手は「新人」として見られなくなる傾向があることは否定できません。

 前田自身、新しい環境に慣れるための工夫を試行錯誤していますが、勝利数やタイトルへの意識はさほど強くありません。

 「勝ち負けはチームの援護で変わると思いますし、それよりもイニングや防御率、そういうところを気にしながらやっていきたいと思います。勝てるに越したことはないですけど。勝ちが付くのは先発投手にとってすごくうれしいですし、気分的に楽になるので、たくさん勝てればいいなとは思いますけど」。

 確かに、成績のカテゴリーとしては「ルーキー」です。ただ、前田をはじめ日本人選手の場合、チーム内での立場、メンタリティーともベテランと同等に評価され、期待されているからこそ、新人王のタイトルと縁遠くなっているのかもしれません。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)

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